2007年05月06日

京極夏彦『前巷説百物語』

 小股潜りの又市が、おぎんや治平、百介らと出会う前の話。
 浮き世のあらゆる損を補う損料屋「ゑんま屋」の仕事を請け負い、埋まらぬ損を世間に納得させる形で解決する又市とその仲間達の仕事を描く。
「怪」掲載された「寝太り」「周防の大蟇」「二口女」「かみなり」「山地乳」と、書き下ろしの「旧鼠」、計6編を収録。

 人の世の理ではどうにも埋まらぬ出来事を「怪異」を介することで世に納得させる、という後々の又市一味の仕事。そのひな形となる「前」での又市の仕事ですが、まだ若い又市の仕掛けなので成功はするものの粗が散見され、時には人死にも。その己の仕事と、そんな仕事をしなければならない世の中を省みて「人死にが出るのは納得いかねェ」と青い事をいう又市。その斜めに構えながらも青臭い又市のキャラが新鮮でもあり、同時に後のシリーズの仕事ぶりに繋がるものでもあり、大変魅力的に描かれております。

 最初は悪いヤツを懲らしめ、泣かされた人間を救ってやる的な仕事から始まり、徐々に江戸の町に潜む大きな影と対峙することに。その運びも時代物エンターテイメントの王道を堂々と行っております。
 が、悪が単なる悪ではなく、裏から見れば別の事情が見えたり、又市らのやっていることが必ずしも正しい結果を生むとは限らない辺りが、現実と又市の青臭い理想の間で疑問と悩みを生み出し、物語的に深みを生み出します。勿論、事件の経過・仕掛け・顛末を妖怪の性質や伝承と結びつけて落とす様は相変わらず見事ですのでお楽しみに。

 『巷説百物語』とそれに続く「続」「後」で見事な仕事ぶりを見せる又市。
 その又市の若かりし頃の仕事ぶりと、どういう経過を辿って御行姿となったか、そしてレギュラーキャラクターとの邂逅など、シリーズのファンには堪らない一作であります。未読の人は、この「前」から時系列に沿って読んでいくのもアリかもしれません。

前巷説百物語前巷説百物語
京極 夏彦

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2007年04月23日

万城目学『鹿男あをによし』

 神経衰弱気味ではないかと指摘され、気分転換を兼ねて大学院の研究室から二学期限定という約束で奈良の女子校にトばされた主人公。
 初日から生徒達に手を焼き、項垂れる彼の前に現れた人語を操る鹿から「運び番」に選ばれたと告げられるのであった。
 そして鹿から近いうちに起こる災厄を避けるため「サンカク」と呼ばれる神宝を手に入れるよう指示される主人公。
 最初は断ったものの「印」を付けられて鹿の顔になってしまい、それを直すためにやむなく承認することに。
 赴任した高校と京都・大阪姉妹校のスポーツ交流大会「大和杯」の剣道部の優勝プレートが「サンカク」と呼ばれている事を知り、自分が顧問である剣道部を率いて優勝を狙うことに。しかし、相手は59連覇を成し遂げる強豪京都と、その60連覇阻止に燃える大阪。弱小剣道部を率いての戦いが始まる――

 『鴨川ホルモー』(→感想)で第4回ボイルドエッグスズ新人賞を獲得した著者の第2作目。
 不満と鬱屈の中で慣れない高校教師をすることになった主人公。微妙に失敗気味にスタートした教師生活が大和杯に向けて生徒達との交流とともに充実したモノに――というファンタジックな要素を含んだ青春教師スポーツモノで終わるかと思いきや、物語は意外な方向に。ネタバレになるので触れませんが、是非読んで確かめていただきたい。

 キャラクター達も魅力的。リチャード・ギア似の教頭、マイペースな歴史教師藤原君、人間以上に人間くさい鹿(ポッキー好き)、そして、謎の行動が多い女生徒堀田イト。ある者は物語を牽引する鍵となり、あるものは物語の調子を整える名脇役となり、奈良の歴史とどこかゆったりとした空気とともに物語を彩ります。
 特に鹿と主人公のやりとりに漂うユーモアとは素晴らしいものが。

 ただ、キーとなるあるものの名称から、ネタが連想できてしまうのはちょっとマイナスかなあ、とは思います。それを補って十二分な面白さではあるのですが。
 笑いも、手に汗握る緊張感も、そしてちょっと爽やかなラブ要素もあるエンターテイメントな要素が詰まった本作。読み終えた後非常に晴れやかな気分になりました。

 『鴨川ホルモー』に続いてその力量をまたもやはっきりと示した著者の次の作品が楽しみで仕方ありません。

鹿男あをによし鹿男あをによし
万城目 学

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2007年04月17日

森見登美彦『【新釈】走れメロス 他四篇』

 「山月記」「藪の中」「走れメロス」「桜の森の満開の下」「百物語」を題材にした短編集。
 日本人なら一度は読んだことがあるであろうこれらの物語を、基本の筋はそのままに、京の町を舞台にして、森見登美彦らしいユーモア溢れる話に仕立てております。

 それぞれ元の作品が持つ文体や雰囲気を残しつつ、一筋縄ではいかない頓狂な登場人物達を配した森見作品に。
 それぞれの作品同士でもリレーのように登場人物がリンクして有機的に各短編を繋いでおります。
 また、「図書館警察」や「詭弁論部」など、過去の作品にも登場した胡乱で胡散臭くて魅力的な団体が登場するなど、以前からのファンはニヤリとすること請け合い。

 収録作はどれも面白いですが、表題作である「走れメロス」が特に素晴らしい。

  「詭弁論部」に属する芽野。部室の存続のために図書館警察長官に人質として囚われた友人・芹名。芽野は期日までに戻らなければならない。戻らねば文化祭の日、美しき青きドナウに乗せてブリーフ一丁で踊らなければならなくなるのだ。そのためには人を信じる心を失った図書館警察長官に友情の美しさを見せねばならない。
 しかし、「世間から忌み嫌われることを意に介さずのらくらと詭弁を弄し続ける」という物好き達の吹きだまりが詭弁論部。敢えて友の元に戻らぬことこそが期待に応えることだ、と芽野の大逃亡が始まる――

 という如何に友の元から遠ざかるかという逆メロス。しかしこれが美しい(?)友情物語になっているのだから素晴らしい。ひねくれ者達の裏返って一回転した友情の話。
 「メロスは激怒した」に始まり「勇者達はひどく赤面した」で終わる、原作を踏まえた構成・文章も実に振るっております。収録作品の中では最もはっちゃけていて森見登美彦っぽい作品と言えましょう。

 漢文調の構えた文章とユーモアの対比が絶妙の「山月記」、現在の恋人とその昔の彼氏を配した映画を撮る屈折した男を様々な証言を元に描く「藪の中」、男の創作活動を導く女とその女のためにしか文章を書けなくなっていく男描く「桜の森の満開の下」、怪談の趣きの「百物語」、どれも読み応えのある短編です。

 新刊は立て続けに出るし、『夜は〜』は本屋大賞2位になって世間的な注目度も上がっているしで、今年は森見登美彦ファンとしては嬉しい年であります。

新釈 走れメロス 他四篇新釈 走れメロス 他四篇
森見 登美彦

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2007年01月09日

奈須きのこ『DDD』(1)

 『月姫』『Fate』のシナリオライターによる伝奇小説。
 
 精神の変化が肉体の変容を起こす精神病「悪魔憑き」、その悪魔憑きの妹に片腕を奪われ、昼間の記憶が継続できなくなった悪魔祓いの男、彼に義手を与え、世界と隔絶した部屋に棲む四肢を義手義足で補う女と見まごう美貌の青年、悪魔憑きを凌駕する戦闘能力を持つ女刑事、等々。

 酷く大雑把に言えば悪魔憑きによって引き起こされる事件を、片腕の青年・石杖所在が解決するという筋。この1巻では4編の事件を収録。

 派手な設定とキャラで世界を固めておりますが、この1巻ではまだ物語の鍵となるであろう義手や、その義手の持ち主たるカイエの謎が明かされないまま、伏線だけを張って終わってしまうため読後感がどうにもモヤモヤしたものに。
 サプライズを誘う仕掛けもあるものの、読んでいて途中で気付く人も多いかもしれません。
 もうちょっとまとまってから、あるいは完結させてから出すべきだったんじゃないかなあ、と思わないでもありません。
 装飾過剰気味な文章とか、ネーミングセンスとかは好みの問題になるでしょうか。

 しかしまあ、「伝綺」という呼称は常々どうかと思っているのですが如何でしょう。講談社文三よ。


DDD 1DDD 1
奈須 きのこ こやまひろかず

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2006年12月05日

森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』

  『太陽の塔』で第15回ファンタジーノベル大賞を受賞した森見登美彦の、『四畳半神話大系』『きつねのはなし』に続く4冊目の単行本。

 春の歓楽街を練り歩き、ま夏の古本市で我慢大会を戦い抜き、秋の学祭で神出鬼没のゲリラ演劇を追いかけ、風邪の大流行する冬の京都で病床に喘ぎながら、麗しの黒髪乙女のために純情男子は奮闘するのでありました。些か空転気味に。

 天然気味の黒髪の乙女と、純情なインテリ学生を交互に語り手とし、「天狗」を自称する青年、謎の風狂老人李白翁、パンツ総番長に詭弁踊りを踊る詭弁論部の面々、性的な物の収集に情熱を傾ける閨房研究会の皆さん、学園祭に出没する「韋駄天こたつ」にゲリラ演劇「偏屈王」等々――愉快痛快奇々怪々な人物達を巻き込んで京都の街を舞台に繰り広げる青春・恋愛物語。

 天真爛漫でな赤子の如く素直な「黒髪の乙女」と、些か大上段に構えた感のある自己韜晦に長けたインテリ青年「先輩」の物言いの対比が生み出す何とも言えないリズムが実に素晴らしい。森見登美彦の独特の語りのリズムは読むうちにニヤニヤしてくるくらいに心地よいなあ。

 どこか滑稽味を帯びたその語りに乗せて語られるのは、大迂回をする恋愛。あからさまなまでに「偶然」の出会いを頻発させ、同じ本に同時に手を伸ばす、というロマンスの演出のために行動する「先輩」。
 そしてそんな外堀を埋める作業に没頭して本丸に突撃しない「先輩」の恋愛が可笑しくもあり真摯でもあり。

 そして、現実の中に突如立ち現れる幻想。太陽の塔の叡山電車でもそうでしたが、森見登美彦はこのファンタジーを実に効果的に持ってきますね。

 というわけで、魅力的なキャラクターと文章を心ゆくまで堪能させてもらいました。実に良かった!

夜は短し歩けよ乙女夜は短し歩けよ乙女
森見 登美彦

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2006年10月08日

京極夏彦『邪魅の雫』

 関連性の見えない「連続」毒殺事件。被害者をつけ回していた男の存在。アパートで死んでいた女は一体誰だったのか。捜査へ介入する公安。
 全貌の見えぬ事件を繋ぐのは一雫の毒。
 「邪なことをすると――死ぬよ」



 内面に欠落を抱えた人物達が、自己と世界に対する疑義を呈しながら物語が進んでいくのは、その文体と相俟って、ああ、京極堂本編なのだなあ、という感じ。
 語り部を担う人物達が皆内面と向き合っていたり、榎木津の登場場面が極限られていたりするため、落ち着いたトーンで物語は進んでいきます。

 そして驚くべきことに、本作は京極堂の妖怪蘊蓄が一切ありません。
 『図画百鬼夜行』を広げて「関口君、邪魅というのは――」とやるアレはないのです。そういう意味では異色作なのかも。

 しかし、ラストの京極堂の詭弁は京極節全開。
 正史・伝説・お伽話の構成と事件の真相とがいつの間にか結びついていく騙りは鳥肌が立ちました。
 物事を分かり易く噛み砕いて敷衍させていくのが本当に上手いなあ。

 主要な登場人物の登場が少なかったり、派手な騙りが少ない分、地味な印象ではありますが、シリーズの中ではミステリ度というか謎解き度の高い作品、という印象です。


邪魅の雫邪魅の雫
京極 夏彦

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2006年08月19日

中島らも 『こどもの一生』

 瀬戸内海の小島にあるセラピー施設で、意識を10歳の子供に戻すという治療を受けた社長とその腹心の部下。他に患者は3人。
 いじめっ子として君臨し始めた社長を懲らしめるため、他の4人が考え出したのは「山田のおじさん」という架空の人物を作り上げ、それを共通の話題にして社長を仲間はずれにすることだった。
 しかし、4人が作り上げた設定そのままの「山田のおじさん」が実際に現れ――

 中島らもが遺した長編ホラー小説。
 演劇のために用意された脚本を小説化したもので、実際に人物が動いているのを想像すると60の爺さんが子供として演技する、というのはなかなか愉快かつグロテスクであるだろうなあ、という感じであります。

 本人も「B級ホラー小説」と後書きで書いていますが、前半の微妙の大人の影を引きずったこどもの世界の愉快さから、「山田のおじさん」が登場して以降、物語が急に恐怖とスプラッタに向かっていく加減、そして恐怖の具現者となる「山田のおじさん」のキャラクターはまさしくB級のテイストでわくわくしてしまいます。
 そして、エンディングのオチの付け方もB級臭くてまたたまらないものが。

 「大人が微妙にそのメンタリティを引きずったまま子供の世界に戻る」というプロットと、「設定だけのはずの人物が実際に登場してしまう」というプロットが一作の中で完全に溶けきっていないような印象はあるにはありますが、これは戯曲と小説の間にある壁、ということでありますでしょうか。

こどもの一生こどもの一生
中島 らも

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2006年08月09日

古川日出男 『アラビアの夜の種族』

 聖遷歴1213年。カイロにもたらされたナポレオン率いるフランス軍来襲の報。
 この異世界の若き英雄を退けるため、イスマーイール・ベイの腹心、アイユーブは一策を献上する。
 その策とは武力による抵抗でも、外交による講和でもなく、一つの書物を献上すること。読む者を幻惑し破滅に導き、歴史を覆す唯一絶美の書『災厄の書』を。
 『災厄の書』を完成させるため、カイロの片隅で夜の語り部ズームルッドが物語を紡ぎ出す。それは『もっとも忌まわしい妖術師アーダムと蛇のジンニーアの契約の物語』あるいは『美しい二人の拾い子ファラーとサフィアーンの物語』あるいは『呪われたゾハルの地下宝物殿の物語』と呼ばれる物語。
 夜が朝に代わり、朝が夜に代わる――。


 実に面白かった! 文庫落ちを待たずにもっと早くに読んでいれば良かったと思いましたわ。

 ナポレオンのエジプト遠征の裏側を、一冊の書物の持つ力で覆そうとする話として描くという着想が素晴らしく、その書物に綴られる物語がまたいい。目眩く書物と夢の物語。

 アイユーブらが登場するカイロの緊迫した「現実」を描写するパートと、ズームルッドが語るアーダム、ファラー・サフィアーンら三人の主人公の物語の「語り」を表現した文体が交互に現れて読者を幻惑します。

 しかも、作者自らが後書きで書いているように、この『アラビアの夜の種族』は偶然手に入れた『The Arabian Nightbreeds』なる書物の訳という体裁を取っており(本文中には割り注まで付されている念の入りよう!)、要は壮大な嘘がこの作品の外郭に与えられて、作品自体が「存在しない書物」と作中でされている『災厄の書』の影として存在しているという手の込みよう。

 この存在しない書物の語り(騙り)に存分に幻惑されることをお勧めします。

アラビアの夜の種族〈1〉アラビアの夜の種族〈1〉
古川 日出男

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2006年07月11日

伊坂幸太郎 『重力ピエロ』

 遺伝子を扱う会社に勤める兄・泉水と、街中に描かれた落書きを消して生計を立てている弟・春。
 仙台の街で起こった連続放火事件と、それに関連する場所に描かれるグラフィティアート。
 事件の謎解きに挑む二人は、やがて事件に隠された遺伝子の法則に辿り着く――。


「春が二階から落ちてきた。」

 この冒頭の一文からして、これは伊坂ワールドの始まりなのである、と高らかに宣言しております。

 ペダントリイになるかならないかの絶妙な線で止められた引用と比喩に満ちた軽快な文章、小気味よく洒落た会話、法に裁かれずとも感情的に許すことの出来ない存在、それに対する怒りと現実との折り合いをつける主人公、と伊坂テイスト満載。
 『ラッシュライフ』の黒沢が「探偵」として登場していたり、『オーデュボンの祈り』の主人公がちらと姿を見せたりと過去の作品を読んでいる者にはにやりとさせられる場面も。

 複雑な出自を抱えた弟・春と、連続放火事件を追ううちに、その出自に絡みついてくる二重螺旋の問題。
 事件を追ううちに、事件そのものよりも家族とは、人の繋がりとは一体何であるか、を問いかけてくる本作。
 ラストの決着の付け方も、ちょっと臭いくらいに伊坂ワールド的終わり方をしておりまして、読後感は爽やかであります。

重力ピエロ重力ピエロ
伊坂 幸太郎

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2006年06月30日

椎名誠 『哀愁の町に霧が降るのだ』

 実は椎名誠はあまり読んでいなかったりするのです。

 アパート「克美荘」の小汚い六畳一間に集って暮らした、著者と友人達の青春の日々を描く自伝的小説。

 金は無いけれど酒は飲む、未来の方向性は定まらないけれど何かバカをやらずにはいられない、ちっとも十全では無いけれども、楽しく、そしてどこか哀愁を帯びた椎名誠青年の青春。
 そんな青春時代の描写の間に挟まれる、現在の椎名誠の言葉と、今も繋がっている当時からの友人達の言葉が、より一層もう戻ることのない、しかし確かに「在った」時間としての過去をより鮮明に浮き上がらせます。

 貧しくも楽しい共同生活と、やがて訪れる別れの季節。
 それらを実に活き活きと、しかし感傷的にならず飄々と描ききる筆力は、さすがの一言であります。
 誰にもある(あった)青春時代、この作品に描かれる日々の断片に我が身を照らし合わせて、何か通じ合うものを見つけ、多くの人はああ、やはりあの時代は楽しかったのであるな、と思うことでありましょう。
 
哀愁の町に霧が降るのだ〈上巻〉哀愁の町に霧が降るのだ〈上巻〉
椎名 誠

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2006年06月02日

福澤徹三 『再生ボタン』

 福澤徹三デビュー作を収めた短編集。今頃になって読みました。

 「夜一人で厠にいるとき、牡丹の花が折れるところを想像してはいけません」
  の一文から始まる「厠牡丹」

 怪談を収めた曰く付きテープを再生しきった時に――「怪の再生」

 うだつの上がらぬ男が美女と知り合ったことで始まった日々は――「幻日」

 妻が始めた喫茶店。そこでは何故か事故が頻発し――「骨」

 伯父の語った不思議な話の数々を綴る「釘」

 女二人暮らしの家に持ち込まれた仏壇。そこから始まる怪異とは――「仏壇」

 末期癌の男が言った「あと10年待ってくれ」の言葉。その言葉通りに男は――「お迎え」

 全編旧仮名遣いで描く、何者かの道行き「冥路」

 ふと立ち現れる自分の顔に見つめられる男の話「顔」

 大きな刃物を持って廃屋を彷徨う男、という夢。
 その夢と現実の接点とは――「廃憶」


 以上の10編を収録。
 色々と後の作品に繋がる要素が詰まっております。
 語りのうちに、いつの間にかするりと別のモノに語りの主体がすり替わっている様とか、ポイと現象と結果だけを投げ出して別に何も説明を加えないが故のヤな感じとか。

 収められている作品の中では「廃憶」のイヤさ加減と妖しげな美しさが私的には好みでありました。


 それにしも福澤徹三は「怖い話」が上手い事はもちろんなのですが、日常生活の埒のあかなさというか息苦しさというか、人生の先が厭になる感じの憂鬱を描くのが実はとんでもなく上手いのではないかと思うのです。出てくる勤め人の皆さんの憂鬱っぷりったら!
 そして夢の描写の危うさと怖さと美しさも絶妙。
 怪談にとって語り口が如何に重要であるかということを再認識させてくれるでありましょう。
 「仏壇」の線香と蝋燭の描写は背筋が泡立ちました。

再生ボタン再生ボタン
福澤 徹三

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2006年05月31日

大槻ケンヂ 『ロコ! 思うままに』

 何だか久しぶりな気がする大槻ケンヂの短編集。

 ホラーハウスに閉じこめられ虐待を受ける少年と、出逢った少女の物語「ロコ! 思うままに」
 妻子を失った男と、ぬいぐるみの愛の交流を描く「モモの愛が綿いっぱい」
 アナザー「ロッキン・ホース・バレリーナ」とでも言うべき、ロック少年達のツアーと追っかけの女の子を描いた「ドクター・マーチン・レッド・ブーツ」
 明智小五郎の妻、文代から乱歩へ充てた手紙が乱歩世界を照射する異説乱歩というべき「怪人明智文代」
 少女達の青春の一ページに記録された異形のマスコット「キテーちゃん」
 少女ゾンビと再殺愚連隊が織りなすもう一つのステーシー物語「ステーシー異聞 ゾンビ・リバー」
 ロック歌手であり雑文書きである男と、成りたいものは自身の妹と語ったB級グラビアアイドル邂逅を描く「アイドル」
 伏龍特攻隊の少年が潜んだ海底。そこで少年が出逢ったモノとは――「イマジン特攻隊」
 少女との約束を果たすため走る少年。彼が乗り込んだバスの中には――「天国のロックバス ロコ! もう一度思うままに」

 以上9編を収録。

 UFOあり、乱歩あり、過去の作品と世界を共有する作品有り、自伝的要素を含んだ作品ありでオーケンテイストのぎゅっと詰まった短編集となっております。そしてそれぞれの作品に通底するボンクラとダメ人間への愛惜。

 どれもオーケン作品の味わいが強くて素晴らしいのですが、個人的には、UFOの蘊蓄と愛を詰め込みながら、哀しみを乗り越える大きな愛の物語として完成している「モモの愛が綿いっぱい」、乱歩作品を大胆に新解釈して見せた「怪人明智文代」、疾走する青春とロック「天国のロックバス」の出来が特に素晴らしい。

 オーケン自身はダメ人間出身の成功者として、最早ダメ人間では無いわけですけれども、この視点で小説を書ける作家、書いて読者に受け入れられる作家は他にそうそう居ますまい。


ロコ! 思うままにロコ! 思うままに
大槻 ケンヂ

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2006年05月21日

平山夢明 『日々狂々、怪談日和。』

 『「超」怖い話』のシリーズでお馴染み、かつ、先日短編部門で推理作家協会賞を受賞した平山夢明のネット上で公開された日記をまとめた作品。

 怪談やら狂気の収集に携わる著者の身辺に起こる様々な怪異――というか奇天烈な出来事を記述しているはずなのに、その文章はまるで幻想文学のような調子を帯びてきております。
 まあ、描かれている出来事は著者にとっての事実であって、必ずしもこの世の事実ばかりとは限らないわけですが。
 それにしても、出くわしたキ○ガイや事件に対する著者の反応は淡々としておりながら、大変に素晴らしいの一言に尽きます。普通の人間だと、ああは言えねえですよ。

 散見される「平山先生、大丈夫ですか?!」と呼びかけたくなるような文章やイラストも大変にステキです。

 『「超」怖い話』シリーズや『東京伝説』シリーズとはまた違った感じの狂気みたいなものが滲み出ております。


photo
日々狂々、怪談日和。―「超」怖ドキミオン
平山 夢明
竹書房 2005-06

by G-Tools , 2006/05/21


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2006年05月13日

伊坂幸太郎『陽気なギャングの日常と襲撃』

 『陽気なギャングが地球を回す』の続編。

 前回の事件から一年。
 人間嘘発見器:成瀬、正確無比の体内時計:雪子、演説家:響野、天才スリ:久遠ら4人らが関わる事件について描く本作。
 第一章では4人のそれぞれが日常の中で関わった事件を描き、第二章以降で4人全員が関わる誘拐事件を描きます。
 それぞれ無関係だったはずの第1章の事件で提示されていた事柄が、第2章以降で綺麗に収束していく様は、小憎らしいほどに美事であります。

 前作がそれぞれの持つ能力を活かして事件に関わった様を描いたのに比して、今作は4人のキャラクター性がより全面に押し出されている感じで、郷野が盛り上げて久遠が承けて成瀬が締めるという。

 伊坂節というか、このスタイリッシュ感というか、そういうのが益々冴え渡っている感じであります。
 この人の作品にある、いつも弱者はどこかで必ず救われるし、悪者は必ず報いを受けるという、ともすれば湿っぽく陳腐になりがちな勧善懲悪観をサラリとさりげなく描けてしまうところがこの人の筆力なのかも知れません。

photo
陽気なギャングの日常と襲撃―長編サスペンス
伊坂 幸太郎
祥伝社 2006-05

by G-Tools , 2006/05/13


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2006年05月09日

倉阪鬼一郎『鳩が来る家』

 実は倉阪鬼一郎を読むのは、これが初めてだったりするのです。

 表題作を含む13編を集めたホラー短編集。
 どれもこれも後味が悪くて素敵です。
 怖いというより、イヤな話だなあという印象でありました。
 理も非もなく、そのヤな事に飲み込まれて行ってしまう登場人物達に合掌。
 
 生理的にとてもイヤだけど、何だか楽しい「蔵煮」と、イヤさがじりじりと増してくる「天使の指」の二編が印象に残ったのでありました。

photo
鳩が来る家
倉阪 鬼一郎
光文社 2003-01

by G-Tools , 2006/05/10


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2006年04月23日

万城目学『鴨川ホルモー』

 ホルモン、ではありません。「ホルモー」であります。
 「ホルモー」とは何ぞや、と問われればそれは全く奇態な競技である、と。

 舞台は京都。京都大学に入学したばかりの主人公・安倍は「京大青龍会」なるまるで広域指定暴力団のような名称のサークルに勧誘される。何をするんだか、活動内容がさっぱり分からない胡散臭いサークルでありますが、その新歓コンパで早良京子の鼻に一目惚れしてしまった安倍はサークルに入ることを決意したのでありました。(安倍君は女性の鼻に対して並々ならぬ関心を注いでいるのであります)

 やがて明らかにされる「ホルモー」の秘密。それは四神相応、東西南北の地に存在する4大学が威信を賭けて、10人一チームとなって鬼だか式神だか良く分からないモノを使役して戦うという競技なのでありました。なぜホルモーという名前なのか。それは読んでのお楽しみ。
 鬼を使うだなんて、そんな信じられるモノか、当然の反応を示す新入生達ですが、数々の奇態な、そしてなんとも間の抜けた儀式を経て、ついにオニを――鬼と言うには何とも珍妙なモノを使役できるようになり、ここに第500回目、その名も「鴨川ホルモー」の幕が切って落とされるのでありました!

 そして京の街に吹き荒れる、恋と友情と珍騒動の青春の嵐。
 この珍奇な戦いを勝ち抜くのは果たしてどこの大学か。そして、安倍君の恋の行方は!?


 というわけで、第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞作であります。
 京の街を舞台にした青春絵巻と「ホルモー」なる何とも珍妙な競技の組合せで実に楽しゅうございました。
 大学生活のユルさ楽しさそれなりの大変さ、サークル活動の無駄なパワーなどが実に濃やかに描かれておりまして、実に良いです。

 オニを使役するという「ホルモー」も別に呪術的なハッタリをかましているわけでもなく、珍妙で何処か愛らしいモノを率いて、やっぱり何処か長閑な感もある戦いを繰り広げるわけで、それが京の街の風情と相俟って、何とも言えぬ良い感じに力の抜けた雰囲気であります。

 女性の鼻に惹かれる主人公安倍、その友人で帰国子女のくせにちっとも垢抜けない高村、安倍の想い人早良京子、ライバル芦屋、先輩でホルモーの導き手となる菅原など(名前が皆そちら系に通じていますが、前世の因縁とか出ませんので安心して下さい)、彼らが織りなす青春絵巻はあまりにも馬鹿らしくて、でも本人達にとってみれば必死なことであり、等身大で描かれたそれは読むうちにぐいぐいと引き込まれたのでありました。

 それにしても、いちいち大仰な名前が付けられた儀式がどれもこれも馬鹿らしいのが素晴らしい。真夜中に神社で全裸で歌と踊りを奉納するとか、こういった無駄な馬鹿らしさが大学生活の有り余るパワーを活写していると言えましょう。

 いや、実に面白かった。オススメであります。

photo
鴨川ホルモー
万城目 学
産業編集センター 2006-04

by G-Tools , 2006/04/23


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2006年04月22日

朱川湊人『都市伝説セピア』

 第133回直木賞作家、朱川湊人のデビュー作。文庫化したので読んでみたり。

 祭りの夜、少女に導かれて辿り着いた見世物を展示するバスで見た河童の氷漬け。
 少女との再会を願って、再度その場所に足を運んだ私が見たのは――「アイスマン」

 不思議なことが起こるという噂がある公園。
 息子とのキャッチボールの休憩中、父親はかつてこの公園で体験した自分のせいで死なせてしまった友とのことを思い出す――「昨日公園」 

 フクロウ男に呼び止められたら、「ホウホウホウ」と三度同じように返さなければいけない。もし、そうしなければ鋭い爪で目玉をえぐり出されてしまう――全国に広まった「フクロウ男」の都市伝説に魅入られた者を描く「フクロウ男」

 死をモチーフにした絵ばかり描く女画家。彼女がかつて恋していた死者と、その彼を巡る二人の女の関係は――「死者恋」

 通勤途中の電車から見えるマンションのベランダ。そこには自分のせいでリストラされた部下が佇みこちらに恨めしげな視線を送っていた。
 そのうち、仕事にかまけて孤独死させてしまった母親もそこに立つようになり――「月の石」

 この5作の短編を収めております。
 どの短編も或いは独白、或いは手紙での告白、或いはインタビューに答える者の語りなど、一作ごとに形式が異なっております。
 ホラーの要素を持ちつつも、それで終わらずに恐怖がノスタルジックな哀しみ・甘い痛みを帯びた感情に変じていくその筆はさすがは直木賞作家。
 純粋に怖さというか、ホラー的要素を押し出しているのは「死者恋」だけではないでしょうか。
 個人的には乱歩的怪奇趣味に囚われた人間の想いと、都市伝説の面白さを描きつつ、小技が効いている「フクロウ男」が一番好きかもしれません。
 そして「昨日公園」のラストの転換は実に素晴らしい。

photo
都市伝説セピア
朱川 湊人
文藝春秋 2006-04

by G-Tools , 2006/04/22



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2006年04月19日

谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』

 今一番熱いアニメの原作、ということで読んでみたり。2時間ちょっとで読了。

 「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」

 という頓狂な演説を入学初日の自己紹介でカマしたエキセントリックな美少女・涼宮ハルヒとそれに巻き込まれる主人公・キョン。
 「不思議なこと」を求めてSOS団(世界を大いに盛り上げるための涼宮ハルヒの団)なるサークルを立ち上げ、童顔巨乳美少女・朝比奈みくる、無口系眼鏡ッ娘・長門有希、悠揚迫らぬ好青年・古泉一樹らを巻き込んだ波乱の学園生活が始まる――。


 平凡な日常に倦みながらも、それはまあそういうものなのだというキョンと、そのままであってはならないという立場のハルヒを軸に、日常の中に入り込んでくる非日常。

 ネタバレになるので直接的なことは書かないですが、
 ミステリにおいて、事件が起こるから名探偵が登場するのではなく、名探偵の存在こそが事件を引き起こすのであるという逆説的なアレというか、名探偵の推理が真実を解決するのではなく、名探偵の推理こそが真実である、というような――伝わるかどうか微妙ですが、そういった物語構造がこの作品の肝でありましょう。
 登場する非日常の現象自体はさほど問題ではなく。

 にしてもハルヒさんは、コスプレ趣味がオヤジだと思います。
 バニーガールって。

 いや、私は好きですけどね、バニーガール。

photo
涼宮ハルヒの憂鬱
谷川 流 いとう のいぢ
角川書店 2003-06

by G-Tools , 2006/04/19




 
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2006年04月13日

川上弘美『センセイの鞄』

 十数年ぶりに居酒屋で再会したツキコさんと、かつての恩師「センセイ」。
 酒とゆったりとした季節の流れの中ではぐくまれる二人の関係。


 というわけで、今頃読んだ川上弘美の代表作の一つ。
 恋愛ものであるのに、湿度が非常に低いのはその筆が非常にカラリとしているからでありましょうか。老境のセンセイと、中年女性であるツキコさんの微妙な心の距離感とその飄々としたやりとりはもう、本当に上手いとしか言いようが無いですわね。暖かくて優しく、そしてもどかしくて、切ない。ああ、語彙が足りなくてすいません。

 しかし、きちんと時間軸を追い、現実の枠の中で話を進める本作の中にあって「干潟――夢」の章でふと滲み出る幻想小説の味わい。上手いなあ、本当に。

photo
センセイの鞄
川上 弘美
文藝春秋 2004-09-03

by G-Tools , 2006/04/14




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2006年04月08日

鯨 統一郎『白骨の語り部 -作家 六波羅一輝の推理-』

 取材のために遠野を訪れた作家と編集者は、道に迷った山中で白骨死体を発見する。検死の結果、土地の有力者・昆家の次女で、死後一年が経過したものであることが判明する。
 しかし、彼女は数日前まで家族とともに生活していたのである――。


 民話の郷・遠野、女系の旧家、盲目の美女やアルビノの少女といったいわくありげな四人姉妹、村を仕切る二つの旧家、といった道具立てを使いながらも、全体に飄々とした軽さがあるのは、やはり鯨統一郎の味でありましょうか。

 物語の主眼は白骨化の謎と、彼女を誰が殺したかという二点をめぐるもので、鯨作品としては非常にオーソドックスなミステリと言って良いかと。
 もっと奇を衒った捻りを加えてくるかと思っておりましたが、最後まで王道を行って着地。

 しかし、確かに「オシラサマ」の話がモチーフの一つとなってはいますが、この物語の舞台がどうしても遠野でなくてはならない、という程の物語との不可分性というものはあまり無かったような印象も。デンデラ野、コンセイ様など有名な遠野の地名が出てはきますが、それほど重要度も高くはなく。

 しかし、オシラサマに対して為される解釈は、いかにも鯨統一郎らしい話でありました。

photo
白骨の語り部―作家六波羅一輝の推理
鯨 統一郎
中央公論新社 2006-03

by G-Tools , 2006/04/08


posted by 凡鳥 at 01:28| Comment(0) | TrackBack(1) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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