2007年07月26日

あらゐけいいち『日常』1巻

 うーん、何とも形容しがたい、しかし実に味のあるギャグマンガであります。

 女子学生達の日常を描いておりますが、その日常がなんともシュール。
 背中にゼンマイネジのついたロボ女子高生や、天から降ってくるコケシ、校内で鹿と格闘する校長。
 そんなシュールな日常の中で次々と繰り出されるギャグの数々。テンポのよいボケとツッコミ(セルフツッコミ含む)が大変に楽しい。
 いや、ツッコミって言って良いのかしらこれは。
 明後日の方向にすっ飛んでいく状況に対する、バリエーションに富んだ反応にいちいち吹き出さずにはおれません。ゆっこの顔芸とか。
 そして繰り返しはギャグの基本。
 テンポ良く繰り出されるギャグの間に突如挟まれる静寂。この間も絶妙。

 可愛らしくも脱力感溢れる絵柄がまた実に良い味を出しております。この絵柄と独特の間が醸し出す不思議な魅力。
 言葉を尽くして説明しようとするほどに、何だかこの作品の面白さから外れていってしまいそうなもどかしさ。
 ちょっと他に類のない楽しさが詰まった一作であります。とにかく一読してこの面白さを確かめていただきたい!!

日常 1 (1) (角川コミックス・エース 181-1)日常 1 (1) (角川コミックス・エース 181-1)
あらゐ けいいち

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2007年07月25日

かかし朝浩『暴れん坊少納言』

 清少納言はツンデレ少女だった! というありそうでなかった設定が妙に新鮮。

 アクティブで破天荒な清少納言と情趣に疎い無骨な橘則光(少納言の夫)の掛け合いを中心に、少納言の主である中宮定子や、和泉式部、藤原豊子などの中宮サロンの人物、そして同世代の好敵手としての紫式部などが登場する平安ラブコメ。

 『ロングロングウェイホーム』『ファニーフェイス』など一癖ある作品の印象が強いかかし朝浩ですが、今作は衒い無くラブコメの王道を行っております。
 
 『枕草子』に見られる少納言の感性や、史実・時代設定といった現実の要素を生かしつつ、少納言や則光のキャラクターの以外に、和泉式部が自堕落系のお色気姉ちゃんだったり、豊子が意地悪な先輩キャラだったりと、現代風のアレンジが。多少の事実の改変がありますが、そこら辺は描く方も読む方も織り込み済みということで。

 清少納言が紫式部の『源氏物語』に触発されて小説を書き始めたものの、できあがったのはヘテロクロミアの美剣士が主人公で――といった痛々しい設定満載の小説だったりするのも楽しい。

 破天荒だけれども感受性が強くて一本芯が通った性格の清少納言のキャラクターが、堅物な則光との対比も鮮やかに実に活き活きと描かれていており、読んでいて気持ちの良い作品。

 この1巻でひとまず完結となっておりますが、「コミックガム」では続編の連載も決まっており、そちらも楽しみであります。

暴れん坊少納言1 (ガムコミックスプラス)暴れん坊少納言1 (ガムコミックスプラス)
かかし朝浩

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2007年07月23日

田丸浩史『ラブやん』8巻

 29歳、ロリ・オタ・プーの三重苦。
 世の中にはカズフサの生き方を外側から笑える人間と、親近感を感じながら自虐的に笑える人間と二種類に分かれると聞きますが、さて皆さんはいかがでしょうか。僕ぁ後者です。

 というわけで、早いものでもう8巻目。連載当初は30歳までまだまだ余裕があったカズフサもいつの間にやら三十路目前待ったなし。そんな17歳と144ヶ月の青年と、ともに堕落した愛の天使ラブやんが送るニートな生活。

 インフルエンザのラブやんを介抱してラブが芽生えかけたりそれを毟り取ったり、実家で爺さんに立派な姿(虚像)を見せつけてみたり、新キャラ小悪魔っ娘・アンジュが登場したり、ちんこをエクステンドしてひとつ上の男を志してみたりと、バラエティ豊かなダメ人間の生き様を見せつけてくれます。

 が。

 カズフサといい感じになったりならなかったりの幼なじみ庵子が、この9巻のラストでついに結婚!

 ――会社の後輩と。

 カズフサと庵子、結構いい感じだったのに!
 なんだかんだ言ってもショックを隠しきれないカズフサ。この作品でこんなビターな話になろうとは……。
 ぐるぐると同じところを回り続けて進まないダメ人間の日々。しかしその変わらぬ円環からは少しづつ失われていくものもあるのでした。

 9巻が出る頃にはきっと三十路に突入しているであろうカズフサの明日はどっちだ!
 ……いや、まったく他人事ではありません。

ラブやん 8 (8)ラブやん 8 (8)
田丸 浩史

講談社 2007-07-23
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2007年07月21日

大和田秀樹『ドスペラード』

 問題作揃いの「チャンピオンRED」掲載作品の中でも一際インパクトの強かったあの問題作がついに単行本化。

 魔法使いギルド・聖竜会の親分の暗殺、それに伴って開始される聖竜会系VS鳳凰会系の血で血を洗う抗争。
 そこに帰ってきた伝説の男・エイジ。
 彼は地水火風の四大元素のどれにも属さない「萌え」の元素を使いこなす魔法使いだったのだ――。

 「三十歳まで童貞だと魔法が使える」伝説を使って、思いきり暴走・迷走する異形の萌え漫画。
 魔法使いギルド=極道の図式で展開する仁義なき戦いから、いつの間にか萌えと童貞を巡る物語に大転換。萌えコスプレをしたオッサン達が画面に満ちる大変ステキな絵面が展開されていきます。
 最初は渋いオッサンが萌え魔法発動によりメイド姿になってしまって恥じらう、というギャグから次第にスライドして、実はエイジは童貞だった! という設定が語られ童貞のトラウマをいじくる物語に。大変に下らない(褒め言葉)設定でステキです。

 そして試練を超えて「萌え」の神髄をつかみ、童貞の中の童貞「最終童貞(ファイナルファンタジー)」として降臨したエイジ。彼の語る萌えの元に全ての童貞達が集う!

「萌えは童貞(ゆめ)を裏切ってはならない 童貞もまた萌えを裏切ってはならない」

「お前の心のおちんちんは まだつるつるのぴかぴかじゃないか」

 など、心震える(?)名言が。

 圧倒的な萌えを駆使する最終童貞・エイジに対して発動する最終兵器。その名は「彼女」。天敵とも言えるその「彼女」に対して最終童貞はどう戦うのか。

 そして――驚愕の最終回。全ては因果地平の彼方へ。
 この凄まじい最終回は是非その目で確かめていただきたい。
 怒ってはいけません。
 この物語を受け入れられた人なら大笑いして受け入れられるハズだ!

 という感じで全編馬鹿らしさ溢れる作品。
 色々と遊び心というか、やり過ぎ感溢れております。
 FFっぽい表紙デザインなども大変に危険でステキ。
 帯の「カイン立ち」をしているエイジに大笑い。
 色々と笑って許して読める方限定で大変にオススメであります。
 個人的にはこういう馬鹿らしさには惜しみない拍手を送りたい。

 とにかく、今年一番の怪作と言っても過言ではありますまい。

ドスペラードドスペラード
大和田 秀樹

秋田書店 2007-07-20
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2007年07月20日

やまむらはじめ『神様ドォルズ』1巻

 表紙の色遣いが今までのやまむらはじめ作品とだいぶ異なっていたので売り場でちょっと見つけるのに時間がかかりました。なんか普通に恋愛モノでも始まりそうな感じの表紙であります。

 が、その作品の中身は、ロボットのような格好をした「案山子」と呼ばれる神の抜け殻を操ることができる能力者「隻」達のバトルありの物語。や、恋愛要素もありますが。

 隻の資格を捨て、村から出て東京で生活することになった青年・匡平。
 案山子「玖吼理(ククリ)」を操り、彼を追って上京してきた隻の少女・詩緒。
 そして、村から抜け出し案山子「暗密刀(クラミツハ)」の力を使って殺人を繰り返す阿幾。

 この三人の因縁と、案山子と隻、それらの根源であり三人出身地でもある「村」の秘密を軸に物語は展開していきます。
 今は普通の人間として暮らしているものの、かつて隻だった経歴を持つ匡平。その彼を「そんなのは本当のお前じゃない」と挑発する阿幾。その二人の上に密かに、しかし大きな影響力を及ぼす村の存在。色々と気になる設定が見え隠れしております。

 同時に、匡平と彼が憧れる女性・日々乃、そして匡平を兄と呼ぶ詩緒の三角関係が展開。
 色々な意味で不器用なんだけれども、その不器用さの中に子供らしい素直さが見え隠れする詩緒が大変に可愛らしい。日々乃と匡平の関係に嫉妬してみせたり、ゲームと一緒に体が動いちゃったり。感情表現が下手で、でも匡平を一途に慕っていたり、おなかが鳴って赤面してしまったりときちんと女の子している詩緒。表情と反応がいちいち可愛らしくてたまりません。
 日々乃のお姉さんっぷり、こちらもまたなかなか。
 それぞれ別の方向から事件を追っている空張刑事と部長の親子なども頓狂なキャラクターで楽しいです。
 総じて、キャラの魅力が高い印象。

 可愛らしい詩緒の反応を見ているだけでも大変心和むものがありますが、物語としても、神の名をいただく案山子とはそもそも何なのか、阿幾と匡平の過去に何があったのかなど興味深い複線が多々張られております。
 この先の展開が気になるオススメの一作。
 詩緒のかわいらしさにやられちゃったら更にオススメの一作。

神様ドォルズ 1 (1)神様ドォルズ 1 (1)
やまむら はじめ

小学館 2007-07-19
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2007年07月17日

土山しげる『喰いしん坊!』14巻

 喰いワングランプリ決勝ラウンド第4戦は、TFF最強の男ハンター錠二VSOKFFに寝返った麺喰いの鳥飼。
 対決に使用する食材はかつて一度だけ鳥飼が錠二を破ったことがある素麺!

 というわけで14巻は全編錠二VS鳥飼の素麺勝負。
 炸裂する鳥飼の「鵜喰い」に対し、錠二は伝家の宝刀「二丁喰い」を繰り出す。
 ズボンの縫い目には常に一膳づつ箸を仕込んであるとか大変に馬鹿らしくて素晴らしい。

 そして錠二に憧れながらその打倒を目指す鳥飼の過去が語られます。
 引きこもりだった鳥飼を目覚めさせた錠二との出会い、そして勝負。
 大食いに目覚める引きこもり、というのもすごいですが、一人の男の自立の物語としてきちんとしているのもまたすごい。ここら辺の妙な味わいと説得力がこの作品の肝であることだなあ。

 そして限界を迎えたかに見えた鳥飼のとっておきの手「通天閣喰い」。
 一度止まった箸が再び動き出し「通天閣から不死鳥が蘇ったァア〜〜!」というアナウンスも、そして通天閣をバックに飛翔する鳳凰という絵面も大変に素晴らしい。
 そして拮抗する勝負も熱い熱い。

 毎回毎回、本当に楽しませてくれる作品であります。

喰いしん坊! 14巻 (14) (ニチブンコミックス)喰いしん坊! 14巻 (14) (ニチブンコミックス)
土山 しげる

日本文芸社 2007-07-09
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2007年07月12日

桐原いづみ『白雪ぱにみくす!』1巻

 主人公・ミドリのキスで長い眠り目覚めた魔法の国のお姫様・白雪。
 ミドリとその妹シンコとともに人間界の生活を始めた白雪ですが、ミドリを殺して自由になろうとするなどかなり攻撃的で破天荒な性格。
 その性格と魔法の力でトラブルを巻き起こしていくのでありました。

 「恋愛でもすれば多少はマシになるであろう」という比較的適当な理由でミドリと白雪がくっつけられてしまう辺りからしてなかなかコメディ度の高い作品。
 わがままで凶暴、Sっ気の強い性格の白雪というのは桐原いづみのヒロインとしては珍しい存在ではないでしょうか。
 彼女が人間界という不慣れな世界で発揮する世間知らずっぷりとズレっぷり、そしてお姫様的高慢さがなかなかに可愛らしい感じであります。そんな彼女が時折見せる優しさや素直さに胸キュン。

 ことあるごとに衝突しているミドリと白雪が、少しづつ互いを分かっていく、という形で進んでいくお話ですが、そこで重要な役割を果たすのが妹のシンコ。
 どこか人とずれたマイペースさを持つ彼女が、アクティブな白雪と好対照をなしております。
 こちらは天然具合と一切周りに流されないマイペース加減が愛らしい。

 白雪の行動や性格に振り回される登場人物が楽しい作品ですが、シンコがいじめの対象になっていたりとヘビーな要素もあり。そこら辺を通じて互いの理解を深めていくミドリと白雪ですが――むしろシンコと白雪の方が色々と距離が近い感じでもあります。

 1巻の終わりには風紀委員の眼鏡っ娘も登場。このお嬢さんも何だかちょっと一癖ある人物のようで。癖のある女の子達に引っかき回される様が楽しい一作。

白雪ぱにみくす! 1 (1) (BLADE COMICS)白雪ぱにみくす! 1 (1) (BLADE COMICS)
桐原 いずみ

マッグガーデン 2007-07-10
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2007年07月11日

カトウハルアキ『夕日ロマンス』

 ラブレターを度々もらうくらいに男子生徒から人気の美少女ユウ。
 しかし、彼女はただひたすらに一人の男子生徒・ヒロにぞっこんなのでありました。
 にぶちんのヒロに対して果敢すぎるアプローチをかけるユウ。
 そしてひたすら空回りの独り相撲をとり続ける
 やがて恋のライバル・トモまで現れて、ユウとヒロの関係はいったいどうなるのか!?

 『ヒャッコ』の著者カトウハルアキが、以前「ファンロード」誌上で連載していた作品がついに単行本化。
 この作品の単行本化をどれほど待っていたことか!

 周囲が引くくらいにヒロのことが好きで好きで好きで仕方ないユウ。
 普段はめんどくさがり屋なのに、ヒロのことになると急にアグレッシブに。
 すごい美人なのに、そのはた迷惑さ加減と黒い改造制服から「暗黒姫(ダークネス・ビューティ)」「パンデモニウム」などというスゴいあだ名も。

 そんなユウが抱いているヒロへの気持ちが空回ってしまって引き起こすドタバタが何とも楽しく、本人のテンパり具合がまた大変に愛らしい。ヒロの態度に一喜一憂、はっきりとした喜怒哀楽を見せるユウが本当に魅力的。
 対するヒロの素っ気なさがまた彼女の反応を引き立てます。そんな風に素っ気ないくせに何気なく放つ一言がユウのハートを打ち抜いて舞い上がってしまう様がまたたまらなく可愛らしいのです。

 そして、恋のライバル・トモ。ユウがヒロに対して▲なら、トモは▽。(ネタバレのため伏せます)
 素っ気ないヒロを挟んで、似たもの同士で犬猿の仲の二人が益々その思いを空回りさせることに。
 また、彼女の登場でユウの家族と、トモの家族、物語はちょっと複雑な二つの家族の物語に。
 ユウの母親と、トモの母親を繋ぐ「絆」と二人の友情がいいですね。

 空回るユウの行動に振り回される友達や先生といった脇役達も、皆キャラが立っていて実に活き活きとしております。このキャラ達を動かしてまだまだいくらでも物語は続けられそうですが、乾いた余韻を残してひとまずおしまいに。ユウとヒロ、二人の「関係」がどうなったかは読んでのお楽しみ。色々と微妙な問題を抱えた二人の距離感を表したなかなかかわいらしいエンディング。

 元々は1話目で完結してしまっている作品ですが、その後の話もキャラの魅力を引き出し、ユウとヒロのラブコメ以外に「家族」という物語を牽引する要素を上手く持ってきて読ませることに成功していると思います。

 しかし、公式ページの作品紹介や帯の惹句は全くいただけません。大変なネタバレ。
 確かにアピールしやすい要素ではありますが……第一話の鮮やかな展開が台無しに。
 未読の方は公式ページの紹介や帯は目に入れないようにして一話目を読むことをオススメします。予備知識なしで1話を読み終えてみてあの衝撃を味わって欲しいです。

 そんな感じで作品を取り巻く環境にちょっとした疵はありますが、個人的には大プッシュ、大変にオススメの一作です。
 是非、読んでみてください。

夕日ロマンス Flex Comix夕日ロマンス Flex Comix
カトウ ハルアキ

ソフトバンククリエイティブ 2007-07-12
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2007年07月10日

小竹田貴弘『怪異いかさま博覧亭』1巻

 「コミックREX」連載中の江戸モノ+コメディ+ちょこっと人情の妖怪漫画。

 両国広小路にかかる閑古鳥鳴く見せ物小屋「博覧亭」で起こる妖怪・怪異がらみの珍事件と、それに伴うドタバタ劇を描いております。

 妖怪馬鹿の主人・榊が妖怪ネタの興業を追求するあまりちっとも儲からない博覧亭。
 でもしっかり者の番頭の柏はそろばん小僧だし、榊の来ている着物は小袖の手だし、座員にはろくろ首の少女・蓬がいるし、という状態にもかかわらず、彼らが妖怪とは見ずに、更に怪異を追い求める榊のすっとぼけた妖怪バカっぷり。

 妖怪モノではありますが、暗さや怖さとは無縁で、カラリと明るく賑やかなコメディ色強い作品。ポンポンとテンポよく繰り出されるギャグが気持ちいい。
 そのギャグへのリアクションなどに何となく80年代的躍動感を感じたりも。

 先述の榊をはじめとして、男前の性格をしたヒロイン蓮華や、初心な元くのいちの八手、などキャラもそれぞれ立っていて魅力的。時々語られるキャラの人間味溢れるいい話も物語の懐を深いものにしております。

 要所要所に差し挟まれる蘊蓄も楽しく、きちんと物語に沿った形で効果的に語られており、それらから作者の妖怪・怪異への愛情が伝わってきます。江戸の風俗についてもまた然り。

 明るく楽しく、しかしなかなか筋の通った妖怪漫画。
 派手なネタではありませんが地力のある面白さ。
 個人的には毎月REXを買い続けている要因の一つである作品であります。
 妖怪好きには特にオススメです。

 でも、雑誌に読み切りとして掲載された「序幕」は、そのまま単行本の頭に持ってきた方が、雑誌連載未読の人には人間関係とか設定とか色々と分かり易かったのではなかろうか、と思うのですがどうでしょう。

怪異いかさま博覧亭 1巻 (1) (IDコミックス REXコミックス)怪異いかさま博覧亭 1巻 (1) (IDコミックス REXコミックス)
小竹田 貴弘

一迅社 2007-07-09
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2007年07月08日

中山昌亮『不安の種+』1巻

 「週刊少年チャンピオン」連載中のホラー漫画。
 以前A5版で出ていた『不安の種』の新章ということで、新書版へと判型は小さくなりましたが素晴らしく怖い話が詰まっており、読んでいて終始鳥肌が立ちっぱなしです。

 日常の中でふと遭遇する訳の分からないもの・出来事。
 原因も理由も物語もなく、ただ「そういうモノ」として存在し、説明があるでなく、話がオチるでなく、ただ投げ出された奇怪なソレは、読者の心にざらりとした不安を残していきます。
 誰かが死んだりとか、因縁話があったりとか、そういうものは一切なし。
 日常からぷつりと切り出されたその怪異は、理で説明できないが故に大変に不気味です。
 人間って「分からない」ものがたぶん一番恐ろしいのでしょう。
 1エピソードは2〜5ページ程度と短く、その短さが想像力を喚起します。

 また、絵が大変に怖くて本当に素晴らしい。目が怖いです。歯が怖いです。
 登場する怪異の「歪み」が読む者の恐怖と益々煽り立てます。
 特に表紙にも登場している「オチョナンさん」がゾワゾワ来ます。
 16話「おじいさんのオチョナンさん」で登場する悪オチョナンさんを見たときには全身にびっしりと鳥肌が立ちました。
 いやあ、素晴らしい怖さですよ、これは。

 ありきたりな締めですが、寝苦しいこれからの夜に大変にオススメの一作。
 個人的には今一番怖いホラー漫画であります。
 それぞれ独立したエピソードで前作を読んでいなくても全く問題はなし。この「+」の発売を機に怖い話好きな方は是非。

不安の種+ 1 (1)不安の種+ 1 (1)
中山 昌亮

秋田書店 2007-07-06
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小野敏洋『そらのカナタの!』1巻

 ある日突然空に現れた、不気味な魚のような姿をした異世界からの侵略者。
 周囲の人々が皆石化した後化け物に変化しまう中、「受信者」として不思議な少年・リクによって侵略者と戦う「調律」の力を与えられた中学一年生の少女・そらの。
 世界を救うために、そらのと仲間達の戦いが始まる!

 というわけで、「コミックラッシュ」連載中の上連雀――じゃなかった、小野敏洋の最新作。
 あんまり物事を深く考えずに、とにかく前向きに与えられた力を使って化け物達を元に戻していくそらのが、なかなか気持ちのよい性格をしており可愛らしい。おみ足を惜しげもなく披露して戦う姿も健康的なお色気があって華やかでございます。
 空中に描いた絵が実体化して戦うという能力で、そらのが描いたファンシーなキャラが戦闘シーンを飛び回っていて楽しげです。

 一方、世の中など滅ぶなら滅んでしまえ、と斜に構えつつも力を与えられた少年涼木クン。
 リクのことを疑ったり、個人の力で世界なんて変えられないといったりと、なにやら屈託を抱えているようで、前向きなそらのの行動に苛立ちを覚えたりしております。
 彼の心を開いていくことがこれからの物語の一つの鍵となっていきそう。

 ヒーロー的明快な性格のヒロインと、屈託を抱えた男の子という配役が微妙に倒錯性を感じさせると言えないこともないですが、堂々たる王道のバトル&友情漫画として進んでおります。今のところは。

 ファンシーなキャラと、怪物を「倒す」のではなく「人間に戻す」という設定、そらのの明るい性格のためにぱっと見明るく楽しげですが、その裏でしっかりたくさんの人が死んでいることにも触れられており、なかなかハードな面も持ち合わせております。

 前髪パッツンのお嬢様キャラ・由貴に、おっとり系お姉様の星歌などの新たな受信者も登場し、涼木クンにとってはちょっとしたハーレム状態となっておりますが、さて、彼の心は開かれていくのでありましょうか。次巻での展開が楽しみ。

 上連雀――じゃなかった、小野先生の描く女の子は大変に可愛らしいのですが、ナニか生えてるんじゃないかと疑ってしまうのは私だけではないはず。というか読者の大多数が思っているに違いない。
 今のところはそんな設定ではないようですが、油断は禁物。
 油断、というか期待かもしれませんが。

そらのカナタの! 1 (1) (CR COMICS)そらのカナタの! 1 (1) (CR COMICS)
小野 敏洋

ジャイブ 2007-07-07
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2007年07月07日

saxyun『ゆるめいつ』1巻

 大学受験のために上京してきた女の子ゆるめが入居したのは予備校生達ばかりが住まうボロアパート。
 そのゆるめちゃんが自堕落系眼鏡っ娘のサエさんや、ほんわか天然系のくみさん、老け顔非モテ系で黒一点の松吉さんらとともに過ごす、アパート内でのゆるーい日常を描いた4コマ漫画。

 というわけで、イラストや同人などで活躍している著者の初単行本。「月刊まんがくらぶ」連載中。

 浪人生なのに何をするでなくブラブラとしているという、社会的身分のエアポケットにポコっとはまっちゃっている若人達のインドア系ゆるゆる日常漫画。
 何というか、曜日の感覚が無くなっちゃっているような人達の生活を、ユルく楽しく描いております。

 たまに近所の公園に行ったりもしますが、基本的にはおんぼろアパート内部が舞台。こたつと布団を中心とした半径200メートルの世界で展開するお話。浪人生ですが学校に行ってません。

 そんなゆるゆるな日常をネタにしながらも、キャラクター設定のみに乗っかって話を進めるようなことは決して無くなく、この何とも言えない独特なユルい間を維持しながらキャラ立てをしつつ、きちんと1本ごとに起承転結を押さえた4コマ漫画としての笑いを提供してくれるのがポイント高いです。
 黒目がちの可愛らしいキャラ達がゆる〜く、しかし楽しげに動いているの画が魅力的。

 無駄な一日を過ごしても全く痛痒を感じないという、ある意味贅沢な日々を送る登場人物達がちょっとうらやましくもあり、一緒にだらだらしたいなあ、などと。
 ごろごろと寝っ転がりながら読みたい一作であります。

ゆるめいつ(1) (バンブー・コミックス)ゆるめいつ(1) (バンブー・コミックス)
saxyun

竹書房 2007-07-06
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中嶋ちずな『いいなり! あいぶれーしょん』2巻

 不思議な光の糸によってアソコと右手が繋がった雫石とコウキ。感覚が繋がった二人の心までが繋がる時、驚異の1000%挿入が発動するのでありました――。
 
 1巻よりも更にエロスと変態度と狂気が増した第2巻。(→1巻感想
 まるで息をするように、いつでもどこでもお漏らし。何だかお漏らしという行為が至って普通の行為に思えてくるから大変。

 この2巻ではの項数の役3分の1を費やして、オシッコを我慢する薫子姉さんを執拗に描いております。
 行く先々で紙がなかったりトイレが壊れていたりでオシッコを我慢させられる薫子さん。しかしついに限界は来て――という。

 うぅむ。かつて一般誌でこんなにも女性の排尿シーンに焦点を当てた作品があったでしょうか。
 顔を赤らめながらひたすら尿意を我慢する薫子さんがエロティック。我慢に次ぐ我慢の後にようやく訪れた解放――と思ったら、その音を携帯電話で中継しちゃったり、それを防ぐために途中でオシッコを止めようとしたり、でも我慢しきれず出ちゃったりと、いったいどこまでマニアックなんだ、といいたくなります。

 しかし、そのマニアックさが霞んでしまうくらいに、登場キャラ達の言動がナチュラルに狂っているのがすごい。

「私に…おしっこ…かけてください…薫子さんの苦しみも暖かさも…全部…受け止めますから」と言い出す雫石や、制服の袖を破って紙の代わりに拭けという貫一郎、この辺が全部善意の行動という辺りが狂っております。

 この他にももう一人の半人半機の少女・ナムの契約者コタローが登場。温泉で「おまんま おまんま」と叫びながらナムをあいぶする様などは――正直、いいのか、これ? と思ってしまうくらいにアレであります。その後のおちんちんを握る展開も含めて大変な馬鹿さ加減と狂気とエロスが充ち満ちております。

 しかしまあ、やはりこれはちょっと尋常の作品ではありません。
 巨人や半人半機の謎などの物語を構成する要素が語られていても、溢れるお汁の圧倒的な量の前に、全てはどうでもよくなって流されてしまいます。後に残るのはひたすらなおバカさとやり過ぎ感と明るい狂気。
 変にブレーキをかけず、是非この狂気を保ったまま突き抜けて欲しいですね。

いいなり!あいぶれーしょん (2) (角川コミックスドラゴンJr. (KCJ110-2))いいなり!あいぶれーしょん (2) (角川コミックスドラゴンJr. (KCJ110-2))
中嶋 ちずな

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2007年07月05日

福島鉄平『サムライうさぎ』1巻

 父と兄の死により、家を継ぐことになった下級武士の次男・宇田川伍助、十五歳。先輩からいわれるままに妻・志乃を娶ったがお互いに夫婦というのがどういうものかは未だちょっと分からない状態。
 武家社会のしがらみの多さに生き辛さを感じていた伍助だが、新妻・志乃の自由さに触発され、剣の道に生きていくことを決め、天下一の剣術道場を開くことを目標にするのでありました。

 真面目で真っ直ぐで努力家の伍助と、ちょっと天然系だけれど屈託のない志乃。この新婚夫婦の関係が実に良いですわね。
 
 夫婦のことなど何も分からず、手を繋ごうとしただけで真っ赤になってしまうような初心な伍助ですが、天真爛漫な志乃の生き方や言葉に心を動かされ、「彼女にふさわしい侍になる」と決意。
 一方、ただ自由に生きているようにも見える志乃も、夫となった伍助のことはしっかりと応援していたり。

 今のところは愛情とかそれ以前の段階で「責任感」と己の定めた目標のために自分なりに頑張っている伍助。
 彼が志乃と本当の意味での夫婦となるのはまだ先で、様々な困難が用意されていることとは思いますが、この新婚夫婦の物語に期待。
 それにしても、志乃の屈託のない明るさというのは実に貴重なものであることだなあ。可愛らしいなあ。

 一応侍を扱った時代物ではありますが、風俗や言葉遣いなどの細かい時代考証などは敢えて無視し、ギャグを織り交ぜつつ少年漫画としての面白さを追求しているという印象。
 実際にそれは大変に成功していると思いますので、そういう部分にツッコミを入れずに伍助と志乃、この年若い新婚夫婦が分かり合っていく物語、女の子のために頑張る男の子の物語として見ていくべきかな、と。
 二人の純粋さが大変に気持ちのよい一作であります。オススメ。

サムライうさぎ 1 (1)サムライうさぎ 1 (1)
福島 鉄平

集英社 2007-07-04
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2007年07月03日

すか『ひろなex.』1巻

 ちょっとアホの子な女子中学生・ひろなと、その友達が結成した探検部。
 そんな名前の割にちっとも探検しないしする気もない彼女たちのユルい日常生活を描いた4コマ。
 「まんがタイムきららMAX」連載中。

 アホの子ひろなと、しっかり者系の美緒、天真爛漫天然少女の風優夏、ドライ系のめぐみ、とわりかしキャラ分担がきっちりと分けられており、何が起こるでない日常をそのキャラ分けでユル〜く描いていくキャラクター4コマ。
 ユルくはありますが、絵柄のかわいらしさと女の子たちの明るい間抜けっぷりには心癒されるものがあります。

 ネタの味付けにはプレイしているゲーム機が3DOだったり、ゲーム機の話題としてリンクスが出てきたりと微妙にマニアックな辺りがオタクな読者により一層優しい感じ。
 「富山」で「ナロー」というネタがあったり、ベアード様のストラップが登場したりと、双葉ネタもちょっとだけ。

 むつかしいことは考えずに、ころころとよく表情が変わる女の子たちを「ああ、可愛らしいなあ」と眺めながらゆるゆるとした流れに乗って読んでいくのが吉かと。

ひろなex. 1 (1)ひろなex. 1 (1)
すか

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2007年06月30日

中山昌亮『泣く侍』2巻

 次席家老の陰謀によって、親族を殺された上、反逆の罪を着せられた物辺総次郎。
 真実を明らかにするため、総次郎は姪の沙絵を連れて藩を出奔し江戸へ向かう。
 その二人を追うのは復讐鬼と化したかつての親友・伊藤清之進。
 信念を貫く男と、妄執に駆られる男。
 二人の道行きの果てに待つ結末は―――。

 『PS羅生門』『不安の種』の中山昌亮が「コミック乱 TWINS」で連載中の時代劇コミック。(→1巻感想
 哀しみ、怒り、様々な感情を込めて慟哭の剣を振るう総次郎と、彼に対する妄執で狂気の剣を振るう清之進。かつて親友として共に剣を学びながら、追われる立場と追う立場となり、全く異なる剣を振るうことになった二人の侍の物語。

 この2巻では忍に襲われて窮地に陥った総次郎と、彼を助けた旅芸人の一座の話が描かれております。

 修羅の道行きの中で、一時の憩いの場を見つけた総次郎と沙絵。
 一見ただの好々爺、しかし実は凄腕という一座の頭・蟻助と、忍の一団の因縁。
 総次郎を斬るために清之進を利用する忍の頭・梟。
 ただ清之進を斬ることだけを目的とする清之進。
 様々な人物達の思惑・因縁が絡まり、物語を織りなす糸はより複雑、そして鮮やかに。

 今回は毒に倒れて見せ場少な目の総次郎ですが、その感情の詰まった剣と、涙がこぼれ落ちる瞬間の描写の見せ方、ひたすら総次郎への妄執に憑かれて彼を追い求める清之進の姿の凄絶さ、蟻助が時折見せる凄みなど力強い筆遣いで描かれる登場人物達の描写が素晴らしい。特に表情。
 アクションも、一瞬で勝負が決まる真剣勝負のスピード感が絶妙に表現されております。
 兎に角、話も絵も巧いなあ、と。

 時代劇モノということで敬遠する人もいるかも知れませんが、これは是非読んでいただきたい一作。
 王道ながらも骨太の物語と、迫力ある絵が素晴らしい一作です。

泣く侍 2 (2)泣く侍 2 (2)
中山 昌亮

リイド社 2007-06-28
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2007年06月29日

きゆづきさとこ『棺担ぎのクロ。懐中旅話』2巻

 身の丈よりも大きな棺を担いで旅を続けるクロ。
 この2巻では旅を始めたばかりの彼女の昔話が語られます。
 旅の歩き方を教えてくれた不思議な「黒い旅人」との出会い。
 その旅に転機を与えた少女・モーとの出会い。
 それらの話の中でクロの旅の目的の片鱗や、彼女が棺を担いで旅をするようになった理由が明らかにされます。
 年の割に落ち着いていて、どこか悟った風のあるクロ。旅を始めたばかりの頃は相応の子供らしさを見せていてた彼女が今のようになったのは旅の経験と、数々の出会いのため。その中で強さと優しさを身につけ、彼女は棺を担いで旅を続けることになったのでありましょう。

 というわけで、彼女の過去と物語の目的が語られたことによりますます深く、そして面白くなってきました。
 クロ以外にも、ニジュクとサンジュの二人の子供らしい無邪気さと純粋さは相変わらず胸がきゅんとするくらい可愛らしいし、コウモリのセンのいい塩梅での不真面目さも、まっすぐな人物達の中にあって良いアクセント。
 時に滑稽さを、時に哀しさを交えながらも、常に静かで優しい語り口で綴られるクロとその同行者達の旅の物語。実にいいですね。

 そして、雰囲気のある絵柄が大変に魅力的な本作。連載時のカラーページが単行本にそのまま収録されているのは本当にうれしい限りです。

棺担ぎのクロ。~懐中旅話 2 (2)棺担ぎのクロ。~懐中旅話 2 (2)
きゆづき さとこ

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2007年06月28日

入江亜季『群青学舎』2巻

「ニノンの恋」
 魔法使いの叔母たちのもとで暮らすちんちくりんの女の子ニノン。
 彼女が恋する相手に書きためていた手紙が叔母達のいたずらによって街にばらまかれてしまい―――

「時鐘」
 うさぎの死体を埋めるのを老先生に手伝って貰った天然系少女。死体ってはじめて、という彼女が意識する生と死の物語。

「北の十剣」
 王弟の反乱によって国を逐われた王女・グゼニアと、王弟の長子・ルーサー。戦乱の中で敵対する二人の想いと、この国の行く末を描いた長編。

「彼の音楽」
 音楽が好きでたまらない吹奏楽部の小番君。しかし、どんな楽器を扱ってみても上手く行かない彼は―――

「続 ピンクチョコレート」
 1巻で惚れ薬事件が語られた春日とみどりさん。付き合うことになった二人の卒業後の話。

 以上の5編の作品に加えて、書き下ろし後日譚も加えた短編集。コミックビーム連載中。

 ううむ。
 やっぱり、この2巻も読んでいて唸ってしまうくらいに巧い作品が詰まっております。

 恋愛モノでしっとりと読ませるかと思えば、戦乱とロマンスの物語を重厚に描いたり、はたまたリリカルで可愛らしい味わいの作品もあったりと、どの作品もテーマも語り口も異なりますが、実に読ませる話ばかり。
 「群青学舎」のタイトル通り、人生が未だ熟さぬ青い時期―――青春と言ってしまっても良いかもしれません―――そのかけがえのない人生の一期間、最も感受性の豊かな時を過ごす人々の想いや行動を瑞々しい筆致で描いております。

 流行りの絵柄でこそありませんが、そんな事は全く問題にならず、この色気がある線が醸し出す雰囲気、魅力的な表情、説得力のある背景など、「漫画」として溜め息が出てしまうくらいに「いいなあ」と思えるのです。
 是非、未読の方がいたら手にとって欲しい作品。

群青学舎 2巻 (2)群青学舎 2巻 (2)
入江 亜季

エンターブレイン 2007-06-25
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2007年06月27日

衣谷遊『極東綺譚』1巻

 人に根を張る「人媒花」に憑かれた少女・暮緒と、彼女を遊郭から身請けした文身の男・九鬼銃造。
 この二人を主役として、異形が姿を現わす明治を舞台に描く伝奇浪漫。

 人に根を張り花を咲かす奇怪な人媒花、それから発生する異形の者といった伝奇的要素に、亀鼈の民と呼ばれる海洋民、それを研究する異端の学者、子供強飯、草薙の剣の解釈などといった思わせぶりな民俗学的ガジェットをちりばめながら描かれる九鬼と暮緒の旅。
 しかし、それらの明確な意味が語られぬまま物語は進展し、読者はそれらの要素から放散されるイメージを感じ取りながら、疾走していく物語を追いかけていくしかありません。

 全くワケが分らない、という人もいるかも知れませんが、逆に訳の分らないまま、圧倒的な画力で描かれるイメージの奔流に身を任せてしまうのは一種の快感と言えましょう。

 亀鼈の民なる海洋民の名称、九鬼の身体にある入れ墨から連想される南方海洋民族のイメージ、「海は産み、陸は戮」という九鬼の師匠である学者の言葉など、物語は「海」を指して走っております。
 柳田国男の『海上の道』などを連想したりして、日本人のルーツに繋がっていく話なのかしら、などといろいろ想像はふくらみますが、現時点では物語の着地点は不明。
 これらの与えられたイメージが今後どのように物語の道筋を作っていくのか非常に興味深い一作であります。

極東綺譚 1 (1)極東綺譚 1 (1)
衣谷 遊

講談社 2007-06-22
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2007年06月26日

惣本蒼『呪街』1巻

 人を呪い殺す力を持った者達が集められた町・呪街。
 強力な力を持ち、呪街の四天王の一人に数えられる笠音。
 呪力に覚醒したばかりで力の制御ができず、徒歩で呪街を目指す少女・禾橋優愛菜。
 呪街で生きる笠音の物語「呪街」と、呪街を目指す優愛菜の物語「呪姫」。同時進行する呪いの街を巡る物語。呪力を宿した二人の少女が出会った時に何が起こるのか―――。

 呪力による殺し合いが横行する呪街。その呪街で己の力を使って生き続ける笠音と、目覚めたばかりの自分の力に戸惑いながら呪街を目指す優愛菜。一方は己の力を理解し殺すことに慣れた女。もう一方は己の意に反して周囲を傷つけてしまう事にショックを受けている少女。二人の対照的な人物を使って「呪街」という特殊な場所を内側と外側から描いております。
 笠音には能力に目覚めて呪街に連れてこられたばかりの少年・碁石真魚を、優愛菜には呪力者を移送する役割を持ち、呪力者について良く知る少年・火詠を配するなど、呪力の素人と玄人を、ちょうど反対の像を結ぶような配役となっており、興味深い構造となっております。

 この作品で扱われる「呪い」は、地縁・習俗に結びついた土俗的社会装置のそれではなく、目に見えない力で相手に影響を及ぼす超能力のようなもの。「呪い」という言葉から土臭いものを期待すると肩すかしを食らいますが、ダークな超能力もの、として捉えればなかなか。
 目に見えない力をぶつけ合う呪力者達の戦いはアクションこそないものの、悪意に満ちて歪んだ表情などはなかなか毒々しくて見応えがあります。

 荒削りな絵と設定ではあるものの、黒々とした重い雰囲気は魅力的であります。

呪街 1 (1)呪街 1 (1)
惣本 蒼

講談社 2007-06-22
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