しかし、彼女はただひたすらに一人の男子生徒・ヒロにぞっこんなのでありました。
にぶちんのヒロに対して果敢すぎるアプローチをかけるユウ。
そしてひたすら空回りの独り相撲をとり続ける
やがて恋のライバル・トモまで現れて、ユウとヒロの関係はいったいどうなるのか!?
『ヒャッコ』の著者カトウハルアキが、以前「ファンロード」誌上で連載していた作品がついに単行本化。
この作品の単行本化をどれほど待っていたことか!
周囲が引くくらいにヒロのことが好きで好きで好きで仕方ないユウ。
普段はめんどくさがり屋なのに、ヒロのことになると急にアグレッシブに。
すごい美人なのに、そのはた迷惑さ加減と黒い改造制服から「暗黒姫(ダークネス・ビューティ)」「パンデモニウム」などというスゴいあだ名も。
そんなユウが抱いているヒロへの気持ちが空回ってしまって引き起こすドタバタが何とも楽しく、本人のテンパり具合がまた大変に愛らしい。ヒロの態度に一喜一憂、はっきりとした喜怒哀楽を見せるユウが本当に魅力的。
対するヒロの素っ気なさがまた彼女の反応を引き立てます。そんな風に素っ気ないくせに何気なく放つ一言がユウのハートを打ち抜いて舞い上がってしまう様がまたたまらなく可愛らしいのです。
そして、恋のライバル・トモ。ユウがヒロに対して▲なら、トモは▽。(ネタバレのため伏せます)
素っ気ないヒロを挟んで、似たもの同士で犬猿の仲の二人が益々その思いを空回りさせることに。
また、彼女の登場でユウの家族と、トモの家族、物語はちょっと複雑な二つの家族の物語に。
ユウの母親と、トモの母親を繋ぐ「絆」と二人の友情がいいですね。
空回るユウの行動に振り回される友達や先生といった脇役達も、皆キャラが立っていて実に活き活きとしております。このキャラ達を動かしてまだまだいくらでも物語は続けられそうですが、乾いた余韻を残してひとまずおしまいに。ユウとヒロ、二人の「関係」がどうなったかは読んでのお楽しみ。色々と微妙な問題を抱えた二人の距離感を表したなかなかかわいらしいエンディング。
元々は1話目で完結してしまっている作品ですが、その後の話もキャラの魅力を引き出し、ユウとヒロのラブコメ以外に「家族」という物語を牽引する要素を上手く持ってきて読ませることに成功していると思います。
しかし、公式ページの作品紹介や帯の惹句は全くいただけません。大変なネタバレ。
確かにアピールしやすい要素ではありますが……第一話の鮮やかな展開が台無しに。
未読の方は公式ページの紹介や帯は目に入れないようにして一話目を読むことをオススメします。予備知識なしで1話を読み終えてみてあの衝撃を味わって欲しいです。
そんな感じで作品を取り巻く環境にちょっとした疵はありますが、個人的には大プッシュ、大変にオススメの一作です。
是非、読んでみてください。
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