2007年04月17日

森見登美彦『【新釈】走れメロス 他四篇』

 「山月記」「藪の中」「走れメロス」「桜の森の満開の下」「百物語」を題材にした短編集。
 日本人なら一度は読んだことがあるであろうこれらの物語を、基本の筋はそのままに、京の町を舞台にして、森見登美彦らしいユーモア溢れる話に仕立てております。

 それぞれ元の作品が持つ文体や雰囲気を残しつつ、一筋縄ではいかない頓狂な登場人物達を配した森見作品に。
 それぞれの作品同士でもリレーのように登場人物がリンクして有機的に各短編を繋いでおります。
 また、「図書館警察」や「詭弁論部」など、過去の作品にも登場した胡乱で胡散臭くて魅力的な団体が登場するなど、以前からのファンはニヤリとすること請け合い。

 収録作はどれも面白いですが、表題作である「走れメロス」が特に素晴らしい。

  「詭弁論部」に属する芽野。部室の存続のために図書館警察長官に人質として囚われた友人・芹名。芽野は期日までに戻らなければならない。戻らねば文化祭の日、美しき青きドナウに乗せてブリーフ一丁で踊らなければならなくなるのだ。そのためには人を信じる心を失った図書館警察長官に友情の美しさを見せねばならない。
 しかし、「世間から忌み嫌われることを意に介さずのらくらと詭弁を弄し続ける」という物好き達の吹きだまりが詭弁論部。敢えて友の元に戻らぬことこそが期待に応えることだ、と芽野の大逃亡が始まる――

 という如何に友の元から遠ざかるかという逆メロス。しかしこれが美しい(?)友情物語になっているのだから素晴らしい。ひねくれ者達の裏返って一回転した友情の話。
 「メロスは激怒した」に始まり「勇者達はひどく赤面した」で終わる、原作を踏まえた構成・文章も実に振るっております。収録作品の中では最もはっちゃけていて森見登美彦っぽい作品と言えましょう。

 漢文調の構えた文章とユーモアの対比が絶妙の「山月記」、現在の恋人とその昔の彼氏を配した映画を撮る屈折した男を様々な証言を元に描く「藪の中」、男の創作活動を導く女とその女のためにしか文章を書けなくなっていく男描く「桜の森の満開の下」、怪談の趣きの「百物語」、どれも読み応えのある短編です。

 新刊は立て続けに出るし、『夜は〜』は本屋大賞2位になって世間的な注目度も上がっているしで、今年は森見登美彦ファンとしては嬉しい年であります。

新釈 走れメロス 他四篇新釈 走れメロス 他四篇
森見 登美彦

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posted by 凡鳥 at 01:35| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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