2006年12月05日

森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』

  『太陽の塔』で第15回ファンタジーノベル大賞を受賞した森見登美彦の、『四畳半神話大系』『きつねのはなし』に続く4冊目の単行本。

 春の歓楽街を練り歩き、ま夏の古本市で我慢大会を戦い抜き、秋の学祭で神出鬼没のゲリラ演劇を追いかけ、風邪の大流行する冬の京都で病床に喘ぎながら、麗しの黒髪乙女のために純情男子は奮闘するのでありました。些か空転気味に。

 天然気味の黒髪の乙女と、純情なインテリ学生を交互に語り手とし、「天狗」を自称する青年、謎の風狂老人李白翁、パンツ総番長に詭弁踊りを踊る詭弁論部の面々、性的な物の収集に情熱を傾ける閨房研究会の皆さん、学園祭に出没する「韋駄天こたつ」にゲリラ演劇「偏屈王」等々――愉快痛快奇々怪々な人物達を巻き込んで京都の街を舞台に繰り広げる青春・恋愛物語。

 天真爛漫でな赤子の如く素直な「黒髪の乙女」と、些か大上段に構えた感のある自己韜晦に長けたインテリ青年「先輩」の物言いの対比が生み出す何とも言えないリズムが実に素晴らしい。森見登美彦の独特の語りのリズムは読むうちにニヤニヤしてくるくらいに心地よいなあ。

 どこか滑稽味を帯びたその語りに乗せて語られるのは、大迂回をする恋愛。あからさまなまでに「偶然」の出会いを頻発させ、同じ本に同時に手を伸ばす、というロマンスの演出のために行動する「先輩」。
 そしてそんな外堀を埋める作業に没頭して本丸に突撃しない「先輩」の恋愛が可笑しくもあり真摯でもあり。

 そして、現実の中に突如立ち現れる幻想。太陽の塔の叡山電車でもそうでしたが、森見登美彦はこのファンタジーを実に効果的に持ってきますね。

 というわけで、魅力的なキャラクターと文章を心ゆくまで堪能させてもらいました。実に良かった!

夜は短し歩けよ乙女夜は短し歩けよ乙女
森見 登美彦

角川書店 2006-12
売り上げランキング : 2430

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

posted by 凡鳥 at 01:45| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。