2006年10月08日

京極夏彦『邪魅の雫』

 関連性の見えない「連続」毒殺事件。被害者をつけ回していた男の存在。アパートで死んでいた女は一体誰だったのか。捜査へ介入する公安。
 全貌の見えぬ事件を繋ぐのは一雫の毒。
 「邪なことをすると――死ぬよ」



 内面に欠落を抱えた人物達が、自己と世界に対する疑義を呈しながら物語が進んでいくのは、その文体と相俟って、ああ、京極堂本編なのだなあ、という感じ。
 語り部を担う人物達が皆内面と向き合っていたり、榎木津の登場場面が極限られていたりするため、落ち着いたトーンで物語は進んでいきます。

 そして驚くべきことに、本作は京極堂の妖怪蘊蓄が一切ありません。
 『図画百鬼夜行』を広げて「関口君、邪魅というのは――」とやるアレはないのです。そういう意味では異色作なのかも。

 しかし、ラストの京極堂の詭弁は京極節全開。
 正史・伝説・お伽話の構成と事件の真相とがいつの間にか結びついていく騙りは鳥肌が立ちました。
 物事を分かり易く噛み砕いて敷衍させていくのが本当に上手いなあ。

 主要な登場人物の登場が少なかったり、派手な騙りが少ない分、地味な印象ではありますが、シリーズの中ではミステリ度というか謎解き度の高い作品、という印象です。


邪魅の雫邪魅の雫
京極 夏彦

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posted by 凡鳥 at 02:36| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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