2006年08月19日

中島らも 『こどもの一生』

 瀬戸内海の小島にあるセラピー施設で、意識を10歳の子供に戻すという治療を受けた社長とその腹心の部下。他に患者は3人。
 いじめっ子として君臨し始めた社長を懲らしめるため、他の4人が考え出したのは「山田のおじさん」という架空の人物を作り上げ、それを共通の話題にして社長を仲間はずれにすることだった。
 しかし、4人が作り上げた設定そのままの「山田のおじさん」が実際に現れ――

 中島らもが遺した長編ホラー小説。
 演劇のために用意された脚本を小説化したもので、実際に人物が動いているのを想像すると60の爺さんが子供として演技する、というのはなかなか愉快かつグロテスクであるだろうなあ、という感じであります。

 本人も「B級ホラー小説」と後書きで書いていますが、前半の微妙の大人の影を引きずったこどもの世界の愉快さから、「山田のおじさん」が登場して以降、物語が急に恐怖とスプラッタに向かっていく加減、そして恐怖の具現者となる「山田のおじさん」のキャラクターはまさしくB級のテイストでわくわくしてしまいます。
 そして、エンディングのオチの付け方もB級臭くてまたたまらないものが。

 「大人が微妙にそのメンタリティを引きずったまま子供の世界に戻る」というプロットと、「設定だけのはずの人物が実際に登場してしまう」というプロットが一作の中で完全に溶けきっていないような印象はあるにはありますが、これは戯曲と小説の間にある壁、ということでありますでしょうか。

こどもの一生こどもの一生
中島 らも

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posted by 凡鳥 at 02:59| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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