2006年07月11日

伊坂幸太郎 『重力ピエロ』

 遺伝子を扱う会社に勤める兄・泉水と、街中に描かれた落書きを消して生計を立てている弟・春。
 仙台の街で起こった連続放火事件と、それに関連する場所に描かれるグラフィティアート。
 事件の謎解きに挑む二人は、やがて事件に隠された遺伝子の法則に辿り着く――。


「春が二階から落ちてきた。」

 この冒頭の一文からして、これは伊坂ワールドの始まりなのである、と高らかに宣言しております。

 ペダントリイになるかならないかの絶妙な線で止められた引用と比喩に満ちた軽快な文章、小気味よく洒落た会話、法に裁かれずとも感情的に許すことの出来ない存在、それに対する怒りと現実との折り合いをつける主人公、と伊坂テイスト満載。
 『ラッシュライフ』の黒沢が「探偵」として登場していたり、『オーデュボンの祈り』の主人公がちらと姿を見せたりと過去の作品を読んでいる者にはにやりとさせられる場面も。

 複雑な出自を抱えた弟・春と、連続放火事件を追ううちに、その出自に絡みついてくる二重螺旋の問題。
 事件を追ううちに、事件そのものよりも家族とは、人の繋がりとは一体何であるか、を問いかけてくる本作。
 ラストの決着の付け方も、ちょっと臭いくらいに伊坂ワールド的終わり方をしておりまして、読後感は爽やかであります。

重力ピエロ重力ピエロ
伊坂 幸太郎

新潮社 2006-06
売り上げランキング : 196

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

posted by 凡鳥 at 16:08| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。