2006年06月30日

椎名誠 『哀愁の町に霧が降るのだ』

 実は椎名誠はあまり読んでいなかったりするのです。

 アパート「克美荘」の小汚い六畳一間に集って暮らした、著者と友人達の青春の日々を描く自伝的小説。

 金は無いけれど酒は飲む、未来の方向性は定まらないけれど何かバカをやらずにはいられない、ちっとも十全では無いけれども、楽しく、そしてどこか哀愁を帯びた椎名誠青年の青春。
 そんな青春時代の描写の間に挟まれる、現在の椎名誠の言葉と、今も繋がっている当時からの友人達の言葉が、より一層もう戻ることのない、しかし確かに「在った」時間としての過去をより鮮明に浮き上がらせます。

 貧しくも楽しい共同生活と、やがて訪れる別れの季節。
 それらを実に活き活きと、しかし感傷的にならず飄々と描ききる筆力は、さすがの一言であります。
 誰にもある(あった)青春時代、この作品に描かれる日々の断片に我が身を照らし合わせて、何か通じ合うものを見つけ、多くの人はああ、やはりあの時代は楽しかったのであるな、と思うことでありましょう。
 
哀愁の町に霧が降るのだ〈上巻〉哀愁の町に霧が降るのだ〈上巻〉
椎名 誠

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posted by 凡鳥 at 02:03| Comment(2) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
椎名誠の「自伝的」作品はあくまで創作であるのに、その
「登場人物」であったはずの沢野ひとしや木村弁護士まで
が、TVなどメディアに出てきてしまうあたり、じつはサイ
バラ作品とキャラクターの関係に近いのか?と思ったり
いたします。
『新橋烏森口青春篇』は緒形直人主演でNHKドラマ化もされ
ましたね。懐。
Posted by 江河閑人 at 2006年06月30日 15:48
西原作品と椎名作品、フィクションと事実との距離感は確かに近いかも知れませんね。
その味付けはだいぶ異なっていますけれども、料理の仕方は似ているというか。

『新橋〜』は今日買って参りました。
今取りかかっている本を終えたら次の次くらいに消化予定。
ドラマ化は知りませんでしたわ〜。
Posted by 凡鳥 at 2006年06月30日 16:37
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