2006年06月02日

福澤徹三 『再生ボタン』

 福澤徹三デビュー作を収めた短編集。今頃になって読みました。

 「夜一人で厠にいるとき、牡丹の花が折れるところを想像してはいけません」
  の一文から始まる「厠牡丹」

 怪談を収めた曰く付きテープを再生しきった時に――「怪の再生」

 うだつの上がらぬ男が美女と知り合ったことで始まった日々は――「幻日」

 妻が始めた喫茶店。そこでは何故か事故が頻発し――「骨」

 伯父の語った不思議な話の数々を綴る「釘」

 女二人暮らしの家に持ち込まれた仏壇。そこから始まる怪異とは――「仏壇」

 末期癌の男が言った「あと10年待ってくれ」の言葉。その言葉通りに男は――「お迎え」

 全編旧仮名遣いで描く、何者かの道行き「冥路」

 ふと立ち現れる自分の顔に見つめられる男の話「顔」

 大きな刃物を持って廃屋を彷徨う男、という夢。
 その夢と現実の接点とは――「廃憶」


 以上の10編を収録。
 色々と後の作品に繋がる要素が詰まっております。
 語りのうちに、いつの間にかするりと別のモノに語りの主体がすり替わっている様とか、ポイと現象と結果だけを投げ出して別に何も説明を加えないが故のヤな感じとか。

 収められている作品の中では「廃憶」のイヤさ加減と妖しげな美しさが私的には好みでありました。


 それにしも福澤徹三は「怖い話」が上手い事はもちろんなのですが、日常生活の埒のあかなさというか息苦しさというか、人生の先が厭になる感じの憂鬱を描くのが実はとんでもなく上手いのではないかと思うのです。出てくる勤め人の皆さんの憂鬱っぷりったら!
 そして夢の描写の危うさと怖さと美しさも絶妙。
 怪談にとって語り口が如何に重要であるかということを再認識させてくれるでありましょう。
 「仏壇」の線香と蝋燭の描写は背筋が泡立ちました。

再生ボタン再生ボタン
福澤 徹三

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posted by 凡鳥 at 23:08| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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