2006年04月22日

朱川湊人『都市伝説セピア』

 第133回直木賞作家、朱川湊人のデビュー作。文庫化したので読んでみたり。

 祭りの夜、少女に導かれて辿り着いた見世物を展示するバスで見た河童の氷漬け。
 少女との再会を願って、再度その場所に足を運んだ私が見たのは――「アイスマン」

 不思議なことが起こるという噂がある公園。
 息子とのキャッチボールの休憩中、父親はかつてこの公園で体験した自分のせいで死なせてしまった友とのことを思い出す――「昨日公園」 

 フクロウ男に呼び止められたら、「ホウホウホウ」と三度同じように返さなければいけない。もし、そうしなければ鋭い爪で目玉をえぐり出されてしまう――全国に広まった「フクロウ男」の都市伝説に魅入られた者を描く「フクロウ男」

 死をモチーフにした絵ばかり描く女画家。彼女がかつて恋していた死者と、その彼を巡る二人の女の関係は――「死者恋」

 通勤途中の電車から見えるマンションのベランダ。そこには自分のせいでリストラされた部下が佇みこちらに恨めしげな視線を送っていた。
 そのうち、仕事にかまけて孤独死させてしまった母親もそこに立つようになり――「月の石」

 この5作の短編を収めております。
 どの短編も或いは独白、或いは手紙での告白、或いはインタビューに答える者の語りなど、一作ごとに形式が異なっております。
 ホラーの要素を持ちつつも、それで終わらずに恐怖がノスタルジックな哀しみ・甘い痛みを帯びた感情に変じていくその筆はさすがは直木賞作家。
 純粋に怖さというか、ホラー的要素を押し出しているのは「死者恋」だけではないでしょうか。
 個人的には乱歩的怪奇趣味に囚われた人間の想いと、都市伝説の面白さを描きつつ、小技が効いている「フクロウ男」が一番好きかもしれません。
 そして「昨日公園」のラストの転換は実に素晴らしい。

photo
都市伝説セピア
朱川 湊人
文藝春秋 2006-04

by G-Tools , 2006/04/22



posted by 凡鳥 at 21:19| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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