2006年03月09日

伊坂幸太郎『陽気なギャングが地球を回す』

 どんな嘘でも見抜くことができる男、成瀬。
 当意即妙、言葉の奔流を操る演説の達人、響野。
 芸術的なスリの技術を持つ若者、久遠。
 正確無比の体内時計を持つ女、雪子。

 それぞれの持つ能力を活かして行われる銀行強盗。
 万全の計画、大胆不敵な行動。
 計画は成功し、4000万円を奪取したが、逃走中に現金輸送車襲撃犯と事故を起こしてその金を奪われてしまう。

 奪還を謀る4人。そして、時期を同じくして雪子の息子に迫る不穏な気配が――

 『オーデュボンの祈り』『ラッシュライフ』(いずれも新潮社刊)に続いての、伊坂幸太郎三冊目の文庫化です。本書は祥伝社文庫。

 気の利いた台詞回しや、どこか浮世離れしている飄々とした雰囲気、しかし現実からは飛躍しない設定――と、伊坂幸太郎テイスト満載の作品でありました。
 場面転換毎に出てくる辞書的単語説明の洒落てる感とか、奇妙な発明品の背負ってる感も含めて。

 伊坂幸太郎は何と言ったらいいのでしょう、スタイリッシュ系天然? 上手くない表現ですが、何となくそんな感じ。

 物語は、それぞれが秀でた能力と、強い存性を持った銀行強盗グループ四人の視点を切り替えながら進んでいきますが、これは同じ時間の別の場所で起こっている事を描く、という物語の構造上果たす役割よりは、四人のキャラクターを活かしてその場面場面を活写していくために作用しているのでしょう。同じ場所に居る人間でもどんどん切り替わっていきますし。
 沈着な鳴瀬、ムードメーカーの響野、人なつこい久遠、賊のある雪子、これら異なる性格の人物の視点が入れ替わり、大変にメリハリのある描写になっておりまして、最後まで一気に読んでしまいました。

 一応ミステリに分類されることはされるんでしょうが、謎解き要素は薄く、カラリと明るいサスペンス、といった趣でしょうか。書いてて良く分からない言葉だなあ、と思ってますが。
 大変に後味が爽やかなのも伊坂幸太郎味。

 それにしても中盤以降に登場するあの人のダメ人間っぷりは他人事とは思えません。
 指摘が痛いですよ、アレ。

 
posted by 凡鳥 at 12:25| Comment(0) | TrackBack(2) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]


この記事へのトラックバック

陽気なギャングが地球を回す/伊坂幸太郎
Excerpt: 陽気なギャングが地球を回す/伊坂幸太郎 強烈な個性を持つ4人組の銀行強盗のお話です。
Weblog: 仮想本棚&電脳日記
Tracked: 2006-03-26 21:30

「陽気なギャングが地球を回す」伊坂幸太郎
Excerpt: 【死体を埋める経験なんてなかなかできるものじゃない!by響野】 銀行強盗・誘拐・・・世の中で計画するヤツがいるなら、そんなものはほとんど失敗に終わる・・・とずっと思っていた。 たぶん物心つい..
Weblog: 雑板屋
Tracked: 2006-04-10 09:01
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。