2007年06月30日

今「FlexComix ブラッド」がアツい!

 新カテゴリとして「雑記」を設けました。
 漫画に関するよしなしごとを綴っていく事になると思います。
 いや、感想を書く時間が無い時にお茶を濁すためではなくてですね―――。

 さて。
 タイトル通り、WEB上の無料コミックス「FlexComix ブラッド」が面白くなってきました。

 6月29日から連載が始まった、山崎毅宜「白球少女」がちょっとすごい。
 学園コメディ野球漫画といった内容で、テンポの良い話運びが楽しく、何より躍動感あふれる絵が大変に素晴らしい。キャラが皆活き活きと動いていてとても気持ちいいです。
 まだ一話ということで、これから話がどう展開していくか非常に興味深いところ。
 野球漫画になるのか、それとも野球は一要素として学園コメディ路線を行くのか。
 いずれにせよ、大変に楽しみな作品が始まりました。

 また、先日連載が始まったTOBI「眼鏡なカノジョ」にも注目。
 毎回異なる眼鏡の女の子をヒロインとしたラブコメオムニバスになる模様。
 眼鏡という一つのフェティシズムをテーマにバラエティに富んだ話が読めそう。
 女の子も大変可愛らしい。

 個人的に周囲に薦めまくっているカトウハルアキ「ヒャッコ」もありますし、7月からはそのカトウハルアキの「夕日ロマンス」も連載開始となる模様。「夕日ロマンス」は完結していたはずだから、こちらは再掲載、という形になるのでしょうか。
 7月には待ちに待った「夕日ロマンス」単行本も出ますので、こちらも要注目。

 他にも竹林月「ことこと。」2巻単行本が近いですわね。

 雑誌「コミックブラッド」の頃は正直厳しい感じが拭えず、そのイメージを引きずっている人も多い(寧ろ存在すら知らなかった人もいるかも)と思いますが、Webに移ってからは注目すべき作品が増えて来ております。
 無料で読めることですし、一度読んでみては如何でしょう。
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中山昌亮『泣く侍』2巻

 次席家老の陰謀によって、親族を殺された上、反逆の罪を着せられた物辺総次郎。
 真実を明らかにするため、総次郎は姪の沙絵を連れて藩を出奔し江戸へ向かう。
 その二人を追うのは復讐鬼と化したかつての親友・伊藤清之進。
 信念を貫く男と、妄執に駆られる男。
 二人の道行きの果てに待つ結末は―――。

 『PS羅生門』『不安の種』の中山昌亮が「コミック乱 TWINS」で連載中の時代劇コミック。(→1巻感想
 哀しみ、怒り、様々な感情を込めて慟哭の剣を振るう総次郎と、彼に対する妄執で狂気の剣を振るう清之進。かつて親友として共に剣を学びながら、追われる立場と追う立場となり、全く異なる剣を振るうことになった二人の侍の物語。

 この2巻では忍に襲われて窮地に陥った総次郎と、彼を助けた旅芸人の一座の話が描かれております。

 修羅の道行きの中で、一時の憩いの場を見つけた総次郎と沙絵。
 一見ただの好々爺、しかし実は凄腕という一座の頭・蟻助と、忍の一団の因縁。
 総次郎を斬るために清之進を利用する忍の頭・梟。
 ただ清之進を斬ることだけを目的とする清之進。
 様々な人物達の思惑・因縁が絡まり、物語を織りなす糸はより複雑、そして鮮やかに。

 今回は毒に倒れて見せ場少な目の総次郎ですが、その感情の詰まった剣と、涙がこぼれ落ちる瞬間の描写の見せ方、ひたすら総次郎への妄執に憑かれて彼を追い求める清之進の姿の凄絶さ、蟻助が時折見せる凄みなど力強い筆遣いで描かれる登場人物達の描写が素晴らしい。特に表情。
 アクションも、一瞬で勝負が決まる真剣勝負のスピード感が絶妙に表現されております。
 兎に角、話も絵も巧いなあ、と。

 時代劇モノということで敬遠する人もいるかも知れませんが、これは是非読んでいただきたい一作。
 王道ながらも骨太の物語と、迫力ある絵が素晴らしい一作です。

泣く侍 2 (2)泣く侍 2 (2)
中山 昌亮

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2007年06月29日

きゆづきさとこ『棺担ぎのクロ。懐中旅話』2巻

 身の丈よりも大きな棺を担いで旅を続けるクロ。
 この2巻では旅を始めたばかりの彼女の昔話が語られます。
 旅の歩き方を教えてくれた不思議な「黒い旅人」との出会い。
 その旅に転機を与えた少女・モーとの出会い。
 それらの話の中でクロの旅の目的の片鱗や、彼女が棺を担いで旅をするようになった理由が明らかにされます。
 年の割に落ち着いていて、どこか悟った風のあるクロ。旅を始めたばかりの頃は相応の子供らしさを見せていてた彼女が今のようになったのは旅の経験と、数々の出会いのため。その中で強さと優しさを身につけ、彼女は棺を担いで旅を続けることになったのでありましょう。

 というわけで、彼女の過去と物語の目的が語られたことによりますます深く、そして面白くなってきました。
 クロ以外にも、ニジュクとサンジュの二人の子供らしい無邪気さと純粋さは相変わらず胸がきゅんとするくらい可愛らしいし、コウモリのセンのいい塩梅での不真面目さも、まっすぐな人物達の中にあって良いアクセント。
 時に滑稽さを、時に哀しさを交えながらも、常に静かで優しい語り口で綴られるクロとその同行者達の旅の物語。実にいいですね。

 そして、雰囲気のある絵柄が大変に魅力的な本作。連載時のカラーページが単行本にそのまま収録されているのは本当にうれしい限りです。

棺担ぎのクロ。~懐中旅話 2 (2)棺担ぎのクロ。~懐中旅話 2 (2)
きゆづき さとこ

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2007年06月28日

入江亜季『群青学舎』2巻

「ニノンの恋」
 魔法使いの叔母たちのもとで暮らすちんちくりんの女の子ニノン。
 彼女が恋する相手に書きためていた手紙が叔母達のいたずらによって街にばらまかれてしまい―――

「時鐘」
 うさぎの死体を埋めるのを老先生に手伝って貰った天然系少女。死体ってはじめて、という彼女が意識する生と死の物語。

「北の十剣」
 王弟の反乱によって国を逐われた王女・グゼニアと、王弟の長子・ルーサー。戦乱の中で敵対する二人の想いと、この国の行く末を描いた長編。

「彼の音楽」
 音楽が好きでたまらない吹奏楽部の小番君。しかし、どんな楽器を扱ってみても上手く行かない彼は―――

「続 ピンクチョコレート」
 1巻で惚れ薬事件が語られた春日とみどりさん。付き合うことになった二人の卒業後の話。

 以上の5編の作品に加えて、書き下ろし後日譚も加えた短編集。コミックビーム連載中。

 ううむ。
 やっぱり、この2巻も読んでいて唸ってしまうくらいに巧い作品が詰まっております。

 恋愛モノでしっとりと読ませるかと思えば、戦乱とロマンスの物語を重厚に描いたり、はたまたリリカルで可愛らしい味わいの作品もあったりと、どの作品もテーマも語り口も異なりますが、実に読ませる話ばかり。
 「群青学舎」のタイトル通り、人生が未だ熟さぬ青い時期―――青春と言ってしまっても良いかもしれません―――そのかけがえのない人生の一期間、最も感受性の豊かな時を過ごす人々の想いや行動を瑞々しい筆致で描いております。

 流行りの絵柄でこそありませんが、そんな事は全く問題にならず、この色気がある線が醸し出す雰囲気、魅力的な表情、説得力のある背景など、「漫画」として溜め息が出てしまうくらいに「いいなあ」と思えるのです。
 是非、未読の方がいたら手にとって欲しい作品。

群青学舎 2巻 (2)群青学舎 2巻 (2)
入江 亜季

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2007年06月27日

衣谷遊『極東綺譚』1巻

 人に根を張る「人媒花」に憑かれた少女・暮緒と、彼女を遊郭から身請けした文身の男・九鬼銃造。
 この二人を主役として、異形が姿を現わす明治を舞台に描く伝奇浪漫。

 人に根を張り花を咲かす奇怪な人媒花、それから発生する異形の者といった伝奇的要素に、亀鼈の民と呼ばれる海洋民、それを研究する異端の学者、子供強飯、草薙の剣の解釈などといった思わせぶりな民俗学的ガジェットをちりばめながら描かれる九鬼と暮緒の旅。
 しかし、それらの明確な意味が語られぬまま物語は進展し、読者はそれらの要素から放散されるイメージを感じ取りながら、疾走していく物語を追いかけていくしかありません。

 全くワケが分らない、という人もいるかも知れませんが、逆に訳の分らないまま、圧倒的な画力で描かれるイメージの奔流に身を任せてしまうのは一種の快感と言えましょう。

 亀鼈の民なる海洋民の名称、九鬼の身体にある入れ墨から連想される南方海洋民族のイメージ、「海は産み、陸は戮」という九鬼の師匠である学者の言葉など、物語は「海」を指して走っております。
 柳田国男の『海上の道』などを連想したりして、日本人のルーツに繋がっていく話なのかしら、などといろいろ想像はふくらみますが、現時点では物語の着地点は不明。
 これらの与えられたイメージが今後どのように物語の道筋を作っていくのか非常に興味深い一作であります。

極東綺譚 1 (1)極東綺譚 1 (1)
衣谷 遊

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2007年06月26日

惣本蒼『呪街』1巻

 人を呪い殺す力を持った者達が集められた町・呪街。
 強力な力を持ち、呪街の四天王の一人に数えられる笠音。
 呪力に覚醒したばかりで力の制御ができず、徒歩で呪街を目指す少女・禾橋優愛菜。
 呪街で生きる笠音の物語「呪街」と、呪街を目指す優愛菜の物語「呪姫」。同時進行する呪いの街を巡る物語。呪力を宿した二人の少女が出会った時に何が起こるのか―――。

 呪力による殺し合いが横行する呪街。その呪街で己の力を使って生き続ける笠音と、目覚めたばかりの自分の力に戸惑いながら呪街を目指す優愛菜。一方は己の力を理解し殺すことに慣れた女。もう一方は己の意に反して周囲を傷つけてしまう事にショックを受けている少女。二人の対照的な人物を使って「呪街」という特殊な場所を内側と外側から描いております。
 笠音には能力に目覚めて呪街に連れてこられたばかりの少年・碁石真魚を、優愛菜には呪力者を移送する役割を持ち、呪力者について良く知る少年・火詠を配するなど、呪力の素人と玄人を、ちょうど反対の像を結ぶような配役となっており、興味深い構造となっております。

 この作品で扱われる「呪い」は、地縁・習俗に結びついた土俗的社会装置のそれではなく、目に見えない力で相手に影響を及ぼす超能力のようなもの。「呪い」という言葉から土臭いものを期待すると肩すかしを食らいますが、ダークな超能力もの、として捉えればなかなか。
 目に見えない力をぶつけ合う呪力者達の戦いはアクションこそないものの、悪意に満ちて歪んだ表情などはなかなか毒々しくて見応えがあります。

 荒削りな絵と設定ではあるものの、黒々とした重い雰囲気は魅力的であります。

呪街 1 (1)呪街 1 (1)
惣本 蒼

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2007年06月24日

きづきあきら+サトウナンキ『メガネ×パルフェ!』

1年前に出会った憧れの先輩を探して高校に入ったみさお。「白衣メガネ部」なる怪しげな集団に属するその先憧れの先輩・究太朗から提案された「恋愛実験」を受け入れ被験者となったみさおだが―――

 『ヨイコノミライ』『メイド諸君』など、恋愛などの甘やかなテーマに、人間関係の黒さを絡めて描いてくるきづきあきら+サトウナンキコンビが「ガンガンパワード」に連載していた作品。
 この作品も露骨ではないものの黒いものが所々に見え隠れしております。

 恋愛実験とは端的に言ってしまえば「人為的に作り出した状況によって恋愛を成立させることができるかどうか」というもの。
 例えば、楽しい共同作業を二人でさせたり、いわゆる「吊り橋効果」を得られるような状況を作り出して対象者をその中に放り込んだりというようなことをして、二人の間に恋愛感情が芽生えるか否かということを観察するわけですが、みさおと対になる被験者は究太朗ではなく、その弟でみさおと犬猿の仲の欧次朗。

 それでも憧れの人と一緒にいたいがために恋愛実験を続けるみさお。
 しかし、究太朗は「誰とも一生恋愛する気がないんだ」と言い放つ。
 一方、もうひとりの被験者・欧次朗はみさおが気になって仕方がなくなり―――

 みさおの自分に対する好意も、欧次朗の気持ちも、実験が二人の関係に及ぼす変化も、何もかも把握した上で、自分を慕う少女と実の弟の関係を手のひらの上で自在に転がす究太朗のドライな姿勢。彼が仕組んだグロテスクな恋愛実験のもとで育まれていくみさおと欧次朗のピュアな恋愛。ここら辺の対比が鮮やかであります。
 しかし、その観察者である究太朗も全てを悟った冷血漢、というわけでもない辺りがこの物語のキモでありましょうか。いや、サディスティックな変人であるのは間違いないのですが……。

 物語はこの1巻で完結。普通にこのまま話を続けられる場面ではありますが、敢えてこの場面で幕をひいたことにより、この先の人間関係は一体どうなるんだろう、と大変に興味と想像力を掻き立てる終わり方になっております。

  
メガネ×パルフェ!
メガネ×パルフェ!
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きづき あきら サトウ ナンキ
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石川雅之『もやしもん』5巻

 何だか強引に人生の転換を迫られている遥。婚約者とフランス婚前旅行に連れて行かれてしまいました。
 一方、農大は収穫祭り前の喧噪のまっただ中。このバカ騒ぎの中、遥が居ない事に気が付いているメンバーは少ないようで――?

 そんな感じでフランスに連れられていってしまった遥を余所に展開する農大収穫祭。
 無料野菜を求めて怒濤の如く押し寄せるおばちゃん達、カオスな模擬店群、後夜祭の学生らしい無駄なパワーに満ちたバカバカしい催しなど、大変に楽しげでよいですね。
 鋼鉄の処女焼きとか、ちびっ子達の目の前で鳥をシメるところから始める唐揚げ屋とか、教授昇進を賭けて教授とボクシング勝負を行う助教授とか、男の欲望丸出しの地下オークションとか実におバカで楽しいものがたくさん。
 ここら辺、螢の
「この学校はすごいよ
 いろんな人がいろんな意志で支え合ってみんなで遊んでいるんだね」

 という言葉に凝縮されていると思います。

 そして、祭りの後に研究室メンバーが見せた遥への不器用な気遣いがいいですね。なんだかんだ言って皆それなりに気にしていたんだなあ、と。

 そしていよいよ舞台はフランスへ。
 オシャレな国というイメージからだいぶかけ離れたアレな道中の様相を呈しておりますが――

 そしてこの5巻でも菌達の会話や欄外・ハシラの文章が良い具合に作品の雰囲気を柔らかく醸しております。

もやしもん 5 おまけ付き―TALES OF AGRICULTURE (5)
石川 雅之
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2007年06月23日

たくま朋正『コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー』1巻

 「コードギアス」異聞、とでも位置づけすべきコミカライズ。
 アニメ「コードギアス 反逆のルルーシュ」の主役であるルルーシュは第一話で死亡(?)してしまい、代わりにギアスの能力を授かったのは、盲目で足の不自由な彼の妹・ナナリー。

 アニメではイノセントな守られるべき存在・ルルーシュが戦う理由として、いわば純粋さの象徴だったナナリー。その彼女が異形のナイトメアを自在に操る能力を得て、見えなかったはずの目を見開きながら
「貴様らがお兄さまを殺したなあ!」
 と鬼神の如き戦いぶりを発揮するのは相当なインパクトがあります。
 これはもう「ナナリー」と呼び捨てではなく、「ナナリーさん」と「さん」付けで呼ばざるを得ない。

 ナナリーさんのギアスの力は「未来線を読む能力」。相手の攻撃・戦況、あらゆる未来を読むことができるというエラい強力な能力を手にして戦闘では大活躍のナナリーさんですが、ルルーシュ君のように外部に対する働きかけをしないので基本的に巻き込まれ型。ただ、ルルーシュは死んだと語られているにもかかわらず、謎の仮面の男・ゼロが登場し黒の騎士団と共にブリタニアへの反逆を開始。(このゼロの中身は1巻の時点では不明)物語はクロヴィス暗殺・河口湖畔立て籠もりなど基本的なアウトラインはアニメをなぞる形になります。
 このゼロが引っかき回す事態に巻き込まれながら、圧倒的な能力で暴れるナナリーさん。彼女の戦いの行き着く先や如何に。

 アニメでは登場しなかったナナリーさんの友人・アリスが登場したり、ブリタニアに女だけで構成されたギアス能力者の部隊があったりと、コミック版のオリジナル要素も多数。特にアリスはルルーシュに対するスザクのような重要キャラになりそうな感じも。

 ギアス能力もアニメの人間に働きかける能力というより、「ザ・パワー」「ザ・スピード」などナイトメア操縦時に発揮される特殊能力という位置づけらしくて、「キングゲイナー」のオーバースキルみたいな感じで捉えたら良いのでしょうか。

 兎に角、ナナリーさんの豹変ぶりがアニメ視聴者の度肝を抜くこと間違いなし。
 「走れる! 跳べる! これが私の新しい身体!」
 「もうあんあ車イスなんて必要ない! 私は自由だ!!」
 と笑い声を上げながら戦場を駆け回るナナリーさんのはっちゃけぶりに大注目。
 そして、ルルさん・スザクがいない「コードギアス」異聞として実に先が気になる展開であります。

 ちなみに密かにパンチラが多いのもポイントと言えばポイントかも知れません。

コードギアスナイトメア・オブ・ナナリー 1 (1)コードギアスナイトメア・オブ・ナナリー 1 (1)
たくま 朋正

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植芝理一『謎の彼女X』2巻

 相手によだれを舐めさせることで感情と感覚を共有することができる少女・卜部。その彼女と付き合っている少年・椿。よだれを介して伝わる二人の初々しい恋愛を描いたラブコメ第二巻。

 いやー、付き合い始めの二人の恋愛の甘酸っぱさ・こそばゆさと、「よだれ」を介したコミュニケーションが生み出す淫靡さの兼ね合いが相変わらず素晴らしい。

 いかにも高校生男子らしい悶々とした気持ちを抱える椿。その彼と気持ちを共有して同じく悶々とする卜部。端目には全く感情を伺えずにクールにみえるけれども、実は初心で恥ずかしがり屋で恋愛に対して純粋な卜部。そんな彼女が健全な男子高校生が恋愛対象に対して抱くいろいろとストレートな感情にアテられて密かに赤面、狼狽、恥じらう様子が本当に可愛らしくてくすぐったくてたまりません。
 不愛想でクールな卜部さんが時折見せる恥じらいの表情ったら!

 例えば、第6話「謎の夏休み」
 自室に招かれ普段は卜部が裸で寝ているというベッドを前にして悶々とする椿。卜部がちょっと部屋を留守にした隙にこっそりとそのベッドに身を横たえ、そこに残った彼女の匂いを嗅ぎながら
「同じベッドに俺と卜部が裸で眠る……」
「これから先二人の仲が進展して……そんな日が来るのかな……」
 などと悶々としながら眠ってしまう。そんな風にして眠っている彼によだれを舐めさせて、その想いを共有する卜部。そして彼が帰った後
「今日のベッドは―――椿君の匂いがする……」
 と言いながら眠り、覚めてみれば
「……椿君の匂いのせいかしら……」
「女の子も……エッチなのね……」

 初心な二人の関係のくすぐったさとこれから二人の仲の進展への期待感がもたらす妄想が活写されていて、読んでいると身悶えしてしまいます。

 また、この2巻では椿の友人・上野と付き合っている丘が卜部に接近。
 同じくつきあい始めたカップルでありながら、少し関係が進んでいる上野・丘のカップルにアテられて一層悶々とし、また互いの関係をより意識することになる椿・卜部のカップル。

 じれったくもどこかエロっちい二人の関係は少しづつ進展しているようで、このちょっと奇妙なカップルの恋愛からはまだまだ目が離せません。

 巻末には書き下ろしのおまけエピソード第12.5話「謎のニャーン」を収録。
 クールな卜部が道ばたで見かけた猫に対してとった行動とは!

 ……か、可愛い。

謎の彼女X 2 (2)謎の彼女X 2 (2)
植芝 理一

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2007年06月22日

イダタツヒコ『誰かがカッコゥと啼く』1巻

5年生を受け持つことになった小学校教師・作馬美智孝。かれは自らの教え子達によって恐ろしい世界に引きずり込まれていく――

 前作『美女で野獣』とは全く趣を異にしたダークファンタジー。『外道の書』『秘密結社アルファー』などの初期作品に近い路線で攻めている本作であります。

 作馬を生贄として彼に憑いた異形の「憑きモノ」を喰らう「魔王」を名乗る生徒達。子供の側と大人の側に別れた世界。魔王の目的は何か、世界がこんな風になってしまったのはなぜか、作馬が「特別」である理由は何か。

 様々な謎を孕んだまま異常な世界を提示しておいて、話が進むにつれ徐々にその謎が明かされていくという形をとっており、最初は戸惑うものの、この物語の輪郭が分かってくると、より不気味さが増してきます。

 クリーチャーの不気味なデザインや、登場人物達の歪んだ表情などが、昏い狂気を孕んだこの世界を静かに盛り上げています。

 1巻ラストで明かされるこの世界誕生の秘密。大きな鍵を握るであろうこの世界の卵から孵るのは一体何か。

 万人受けする作品ではないと思いますが、エッジの効いたダークな話を読みたい人にはお勧め。

誰かがカッコゥと啼く 1 (1)誰かがカッコゥと啼く 1 (1)
イダ タツヒコ

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2007年06月21日

「サンデーGX」07年8月号

島本和彦「新吼えろペン」
 富士鷹ジュビロが久々に登場。テーマは「広げた風呂敷のたたみ方」について。
 流れ星超一郎の
「最終回でコケるのが!! 名作の条件なんだよ!!!」
 とかすごい言葉も飛び出しますが、なかなか考えさせられる話であります。最初から畳む事を放棄して、とにかく広げるだけ話を広げて読者を楽しませるのか、広げたものをきちんと畳んで物語としての完成度を高めるのか。しかし風呂敷を広げられずにはいられない業。
 それにしても富士鷹ジュビロ登場の回は面白さが跳ね上がるなあ。

やまむらはじめ「神様ドォルズ」
 「宇輪筒」という案山子を操り、阿幾に対してちと乱暴な勧誘をする勾司朗。
 一方、詩緒と日々乃は訓練で汚れてしまった玖吼理の掃除中。シャワーで塗れちゃって二人で入浴というサービスが。
 それにしても詩緒はかわいいなあ。

高橋慶太郎「ヨルムンガンド」
 中国系企業の裏ネタに食いついて、再び登場のスケアクロウ。しかし――
 蹴り上げる前にタイトスカートをまくり上げる秘書のオネーサンがステキ。
 そしてココ達の航海を襲う海賊達。軽く退治去れてしまいましたが、ココ一味はチームワークが良く、戦闘描写も大変に楽しげで良いなあ。

広江礼威「BLACK LAGOON」
 ロックの信条というか生き方に影響を受け始めているレヴィ。
 それにしても、素っ裸で目の前をうろうろしているレヴィに素で接しているとは、ロックも肝がでかくなったものだなあ。それとももうそういうのも当たり前になった関係、という意味なんでしょうか。

榊一郎/原尾由美子「CODE-EX」
 体から電磁波を発生するという能力を持ち、その力を使って病人達の治療に当たる少女と、電磁波の出力調整ができず、彼女のもとで修行している少女。
 人助けをしている彼女達の能力に探りを入れているの謎の黒服達――
 ということで7月からのアニメに関連しての連載。まだ話の導入と言った感じでこれからどう転がっていくのか分かりませんが、相変わらず魅力的な画ですな。

宮下裕樹「正義警官モンジュ」
 正義執行プログラムにより暴走したフゲン。モンジュのそれと異なり、リミッターを持たないフゲンは警官である山岸にも襲いかかる。そこに助けに入るモンジュだが――
 フゲンはおっかないし、モンジュはカッコイイ。「ここはアタシに任せてお前は先に行け!」状態の理緒サンですが、ああいうキャラなので、ちょっとしたギャグ状態に。
 フゲン暴走によって一気に話が展開された感じ。これから一体どうなっていくのか楽しみです。

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「チャンピオンRED」07年8月号

吉富昭仁「BLUE DROP」
  不思議キャラの「まーちゃん」登場。素っ裸にネクタイとネコミミとう頓狂な格好の彼女はショータの精液を絞り取ろうとするが――
 ――何なんでしょう、この色々と突き抜けちゃっている話は。倒錯度と狂ってる感がストップ高です。しかも次からは女装モードで学園編突入。このまま更に暴走して頂きたい。

木々津克久「フランケンふらん」
 何度か読み切りで掲載されていた作品が連載化。相変わらず変態的なグロが満ちていて素晴らしいです。
 事件自体は解決するけれど、後により大きな課題を残していくふらんのメス捌きがステキ。

藤見泰隆/カミムラ晋作「ベクター・ケースファイル」
 今回の舞台はゴミ屋敷。何か良い話になっておりますが、普通にじいさんアンタ片づけなさいよ、という感じが。子供達も子供達だ! しかし、扉絵の稲穂三は妙に色っぽいし、必然性もなく着替えシーンが入っていたりと、全体に漂うB級演出がたまりません。

南條範夫/山口貴由「シグルイ」
 清玄といくの過去回想に突入。虎眼先生による伊良子成敗の後、二人が如何にして酷い目に遭い、そして生き残ったかを描いております。『駿河城御前試合』の一編「峰打ち不殺」の主役・月岡雪之介が登場し、盲となった伊良子の復活に一枚噛みそうな展開に。

戸田泰成「ジャイアントロボ 地球の燃え尽きる日」
 アルベルト一行に加えて、GR-2・GR-3まで登場し大作少年大ピンチ! と思いきや実はGR2・3は味方だった! という展開に驚愕。そして林冲を助け出し、国際警察連合本拠地・梁山泊へと運ばれる大作達。警察連合の皆さんも本当にキャラが濃い人たちばかりで大変。毎回毎回胃もたれするくらいの濃さとインパクトで大変ステキ。
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原作:藤見泰高 漫画:カミムラ晋作『ベクター・ケースファイル 稲穂の昆虫記』1巻

 普段はもっさりしているけれども、虫の事となるとすごい知識と行動力を発揮する女子高生・榎稲穂。
 現代の虫愛づる姫君とでも言うべき彼女が、虫が原因で起こるトラブルの数々を解決していく! という作品。

 食中毒騒ぎを起こした中華料理店、民家に巣食ったスズメバチ、有名建築家の家に潜む問題、グラビアアイドルを襲う痴漢行為等々、事件に潜む虫の影を探り出し、その生態から事件を解決に導いていく様子を、良い意味でB級ミステリのノリで描いております。事態の規模の割に色々と大仰なのがポイント高いです。

 また、本筋とはあんまり関係なく挟まれるお色気――というかエロスもまたB級的味わいと心躍るものがあってよいですね。
 特にAct.4「痴漢電車のアイドル」(すごいタイトルだ……)のエロ度は突き抜けております。連載時にこれを読んだ時は我が目を疑ったものです。変態的且つテクニカルなエロスがここに。

 主人公の稲穂さんも、普段は地味でぱっとしないけれども、白衣の下にはグラマラスなボディを隠している、というギャップも大変にステキ。

 女の子達のお色気と、ワラワラと群がる虫たちのイヤさ加減の融合が、何だか変態的でステキです。さすがは「チャンピオンRED」掲載作品と言うべきでしょう。
 お色気と変態性だけでなく、きちんと虫への愛が詰まっているのもポイント高いです。

 単行本描き下ろしのおまけ漫画には温泉に浸かるヒロイン達の後日譚が。こちらもこれでもか! というくらいのサービスシーンが詰め込まれております。

ベクター・ケースファイル 1―稲穂の昆虫記 (1)ベクター・ケースファイル 1―稲穂の昆虫記 (1)
藤見 泰高 カミムラ 晋作

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2007年06月20日

柴田ヨクサル『ハチワンダイバー』3巻

「一局の将棋は一つの壮大な甘くない物語だよ」と語り、漫画のキャラクターとともに盤面に己の物語を描き出す文字山。
 その文字山の将棋よりも深く潜ろうとするハチワンダイバー・菅田の攻防。

 文字山の描く物語に飲まれて窮地に立つ菅田と、そこからの圧倒的なスピード感と緊張感の中で展開する勝負。
 一線を超えて、涙と汗と鼻水にまみれながらノーガードの打ち合いをする二人の姿は滑稽でありながらも、凄まじく熱いのです。
 短く区切られた台詞の力強さと、大ゴマの連続が生み出すダイナミズム。

 自分の漫画のキャラと対話しながら将棋を指す文字山の特異なキャラクターインパクトの強さも素晴らしい。
 いやあ、この3巻も圧倒的に面白い!

 そして、文字山との勝負の次の対戦相手は「アキバの受け師」のメイド時の名前を知る男・斬野。
 勝てばみるく(アキバの受け師)は自分の物となるという斬野の言葉に動揺する菅田はそんな精神状態のまま勝負に突入し、圧倒的な力の前に為す術無く……

 以下次巻!
 一体どうなるのでありましょうか。本当にこのテンションとスピード感、パンチ力は素晴らしいなあ!

ハチワンダイバー 3 (3)ハチワンダイバー 3 (3)
柴田 ヨクサル

集英社 2007-06-19
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2007年06月19日

「コミック百合姫S」創刊号

 「コミック百合姫」の姉妹誌として新創刊の季刊誌。「百合姫」でおなじみの作家から、一迅社の雑誌初登場の作家まで、幅広い作家陣が「百合」を題材に筆を揮っております。「百合姫」連載作家以外の作家陣を見るに、成年系作家も多く、本誌に比べて男性読者にターゲットをより絞った雑誌と言えるでしょうか。

 女の子同士の恋愛の切なさをしっとりと綴った作品もあれば、ポップで明るい作品もあり、なかなかバラエティに富んだ作品が集まっていて華やかな印象。
 女の子同士の恋愛要素さえあればあとは比較的自由、といった感じで作品毎に百合度の濃淡が結構あり、逆にこれが雑誌的にはメリハリ効いた感じになっているのかも。

 以下、いくつかピックアップした作品別感想を。

■宮下未紀「マイナスりてらしー」
 金持ちから借金まみれになってしまったお嬢様と、お付きのメイド。彼女らのもとに給食費の請求にやってきた委員長。「マイナス金運」なる悪運故に没落した、と語るお嬢様に委員長は――
 お嬢様とメイドの麗しい(?)関係を描きつつギャグっぽいオチに。世間知らずで偉そうなお嬢様がなかなか可愛らしい。
 ただ、借金まみれならもうちょっと色々処分するものがあるだろうに、とか細かい事を想ったりもしますが、そこら辺は、まあ。

■柏原麻美「フォーチュン・リング」
 すり切れるまで身につけていると願いが叶うというフォーチュンリング。水泳部の先輩に憧れる少女は、その先輩の腕に結ばれたフォーチュンリングを見つけてしまう。彼女も自分では結べずにいたリングを先輩から結んで貰うが――
 先輩の腕のリングから想い人がいることを知り、また自分に結んで貰った事から先輩の心は自分の方には向いていない事を知った少女。しかし、リングをしていると常に先輩の事を強く意識してしまうという恋愛のもたらす呪縛。傷つきながらも自分の想いに整理を付けて再度立ち上がる少女の成長を描いております。うまいなあ。

■あらきかなお「ポエムに恋して」
 不器用なんだけれど、ひとたびポエムにすれば饒舌になって言葉が突っ走ってしまう少女と、彼女が憧れる先輩のお話。
 「好き」のあまりに突っ走ってしまう少女の行動と言葉がポップに描かれていて大変に楽しげな作品。ポエムがアレだったり、ちょっとアホの子だったりする主人公が可愛らしくて良いですわ。

■吉富昭仁「SUIKA」
 スイカを一人で半分食べきると願いが叶う、という変なおまじない。夏休みのある日、転校を前にした少女とその友人がそれぞれの願いを込めてスイカを食べ始めたが……
 ずっと続くと思っていた当たり前の日の終わりを前にした本人達も結果が分かり切っているささやかな抵抗。どこかノスタルジックで楽しくてちょっと哀しくて、と夏の想い出の一日を綴っています。
 これはいいなあ。タイプの異なる二人の少女がスイカを介して互いの想いを打ち明ける様がユーモアがありながらちょっと切なくて。
 あと、スイカの中身を湯船にぶち込んでスイカ風呂にしたら何かエロいよね、と語る少女の言葉はなんだか変態的なエロスを感じますが、まさにその通りであるなあ、とも思うのですが如何。

■すどおかおる「オトメキカングレーテル」
 あこがれの名門女子校に転入してきた少女。麗しの乙女達とのきらびやかな学園生活が始まるかと思いきや――
 ――多分、この雑誌内一番の異色作。百合+甘味+異能力バトルでちょっとビックリ。色々はっちゃけてるなあ。

■石見翔子「flower*flower」
 政略結婚で異国に嫁いできた王女・ニナ。だが、本来の婚約者である王子・蒼を振り、その妹の朱と結婚宣言をする。残酷なまでに冷たい態度を取る彼女に対してどう対処していいかさっぱり分からない朱だが……
 心を開く前、仮面を被ったままのニナ笑顔が怖くもあり、一種独特の美しさもありで、妖しい魅力を放っております。それらの表情と心を開いた後のギャップがステキ。
 しかしまあ、女の子同士で政略結婚成立しては色々と今後両国に問題があるのでは、と百合方面を離れて思わないでもないです。血筋の問題とかどうするんだろう。

 以上のようになかなかバラエティに富んだ作品が詰まっております。
 百合、という視点を抜きにしてもなかなか読ませるのではないでしょうか。

 ただ、全300ページチョイで880円という値段設定に割高感が。
 私はレジ持ってくまで価格を全く気にしていなかったので金額を告げられてちょっとビックリ。
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2007年06月17日

佐藤信『ソードゲイル』1・2巻

 新刊ではありませんが、以前から人に勧められたものの、なかなか見つからずにいたのをようやく手に入れたので。
 どこの本屋にも1巻が置いていなくてえらい苦労しました……。

 剣の力が支配する世界、イグラウ。
 その大陸の東端に位置するフェレー王国は小国なりに安定した治世が続いていた。
 しかし、ある日大陸一の強国・ベルジェ帝国がフェレーに向けて軍事行動を開始、その軍勢は王都へと迫る。
 迎え撃つフェレー軍には先の騎槍試合で優勝した騎士・フレイの姿があった――。


 フェレー王の庶子でありながら、王位継承権を持たず、一騎士として戦場に立つフレイ。彼を主人公として二国間の戦を描いております。
 フレイの軍略によって善戦しながらも、圧倒的な戦力差によって追いつめられるフェレー軍。地方領主ボレアス伯の居城に拠って援軍を待つが、城門を突破されてしまい――というのが2巻までのお話。

 身分的には一介の騎士に過ぎないフレイですが、フェレー王の負傷により指揮を任される事に。この辺の展開も冒頭に描かれた騎槍試合で見せたフレイの才能と度量によって納得できるようになっているのが巧いなあ、と。その彼が展開する策も戦術的に現実味と説得力があって、実に読ませる展開に。

 フレイの生い立ちや彼を取り巻く状況が物語に更なる色彩を加えております。王国一の騎士であり師匠でもあるアストレイとの関係が実に良いですね。

 中世ヨーロッパ的世界観の架空の世界を舞台とした作品ですが、魔法や魔物といったファンタジー要素は一切登場せず、あくまで軍隊と軍隊同士の「戦」を扱った骨太な戦記物となっております。オススメ。

 刊行ペースを見るとそろそろ3巻が出そうな時期でありますが、とても楽しみです。

ソードゲイル 1 (1)ソードゲイル 1 (1)
佐藤 信

講談社 2006-04-17
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2007年06月15日

原作:青山広美 作画:山根和俊『GAMBLE FISH』1巻

 金持ちとエリートの集う学園に転入してきたギャンブラー、白鷺杜夢。
 風紀委員を打ち負かし手に入れた百円玉を元に、一ヶ月でこれを100億円にしてみせると宣言する!

 100円を100億円とはまた何ともハッタリが効いていていいですわね。
 そんな感じでハッタリとケレン味に満ちたギャンブル漫画の第一巻登場。

 エリート学園の中に入り込んできた異分子白鷺杜夢。
 ハッタリで生徒達の注目を集め、彼を潰そうと挑んでくる生徒達を返り討ちに。
 そんな彼の前に登場した教師・阿鼻谷。
 「ギャンブルは人の本性にして人生の縮図。なればこそ負けた事が大罪なのだ」
 と言い放つ彼が差し向けた次なる刺客は女マジシャン。
 提示された勝負はブラックジャック。
 その神業のカード捌きを目にして白鷺は言う。
「マジックは光……ギャンブルは闇さ」

 いやあ、いろいろと振るっていていいなあ。
 どこから見ても「悪役」と主張している阿鼻谷のルックスや、その変態性。
 阿鼻谷の前で全裸になって己の技量を証明する女マジシャン・月夜野。
 ケレン味とインパクトに満ちたキャラクター達やセリフ回しが大変に楽しい。
 いじめられっ子系の眼鏡少年が解説&驚き役としてキッチリ仕事している辺りもポイント高いです。

 「ギャンブル」として戦いを繰り広げる者達の虚々実々、丁々発止のやりとりも、緊張感を保ちながらハッタリが効いていてまた魅力的。
 次々と濃いキャラが登場し、話が進むにつれてどんどん濃さと面白さが上がってきております。今後の展から目が離せない一作です。

GAMBLE FISH 1 (1)GAMBLE FISH 1 (1)
青山 広美 山根 和俊

秋田書店 2007-06-08
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2007年06月14日

佐原ミズ『バス走る。』

 『マイガール』(→感想)の佐原ミズが描く恋愛漫画短編集。
 様々な人達が行き交うバスの停留所。そこで始まる小さく純粋な恋愛の始まりを綴っております。
 
「空曲がり停留所」
 ノルマがこなせず途方に暮れる不動産会社の営業と、飛行機を指で作った窓で捉える少女。
 1日10回飛行機をつかまえられたら願い事が一つ叶うという彼女。
 優しくて、その優しさゆえに人生の一場面で躓いている者同士の出会いが暖かな筆致で描かれております。自分のことを措いても、相手の小さな幸せを願う二人のピュアさが良いですね。

「さくら町停留所」
 冴えない生物教師と、その彼に対して卒業式を前に「嫁になって」と告白をした女生徒。大学を卒業する4年後の再会を約束した彼女だったが―――
 頼りないとは言え、男に対して「嫁になって」という要求をしたり、白衣の下に潜りこんで「セクハラー」などとやる女生徒がトボけた味わいがあって可愛らしい。その彼女がバスの中でぽつぽつと先生の好きなところを挙げて、徐々に自分の想いを告げて行くシーンはいいなあ。
 そしてトボけつつも暖かなラストがまた何ともいい感じです。個人的には収められた話の中で一番隙です。

「忘れ名ヶ丘停留所」
 昔の男友達から結婚の報せを受けた女性。その手紙を眺めていたバスの中で男に突然話しかけられる。その事を聞いた母からの「気持ちを伝えることは大変」という言葉に、かつて自分が思いを伝えることが出来なかったその男友達との事を思い出す。
 自分は相手を想っているのに、相手は自分を見てくれていない切なさ。結局想いを伝えられないままになってしまった彼女が自分に向けられた好意に対してどう向き合うか。
 一歩踏み出した彼女の世界が変わった瞬間の物語。
 でも、男のアプローチとか、女性がその男の話を聞こうと思う理由とか、ちょっと唐突な感じも。

「天気読み」
 二人で天気を予想するといつも自分は外れ、彼女が当たるという二人。そんな恋人同士の、自分より先に目指す道を行ってしまった彼女に対する焦燥と不安。それに対する彼女の回答は―――
 残されたメッセージは激励かもしれないしまた同時に改めての愛の告白だったのかもしれません。

 「バス走る」というタイトル通りバスが持つ完全に時間通りではない運行とか、微妙なローカル性とか、そういったものがこれらの物語の雰囲気とか速度を形作る一つの要素となっているのでありましょう。
 身近で優しい物語が詰まっております。繊細で柔らかな筆致がまた物語と合っていて良いのです。

 後半に収められた高校生達の初々しく、くすぐったいような恋愛模様を描いた短編も大変に良い話となっております。

バス走る。バス走る。
佐原 ミズ

新潮社 2007-06-08
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2007年06月13日

「コミックビーム」07年7月号

丸尾末広「パノラマ島綺譚」
 新連載。江戸川乱歩の傑作を丸尾末広がコミカライズ。
 連載第一回目となる今回は人見広介が急死した菰田源三郎の墓を掘り起こし、入れ替わりを計画を実行するところまで。物語は動き始めたばかりですが、「パノラマ島」の妖しい美しさをこれからどう描いていくか非常に楽しみです。

吉田戦車「宇宙巨人アムンゼン」
 タマゴ怪獣のシロミズンとキミンゴとの戦いの中で生まれるアムンゼンとゾリーの奇妙な連帯感。―――と思ったら最終回なのか!
 吉田戦車らしい奇妙な味わいのある作品でしたが、何でこんなに早く終わってしまうんだろう。

入江亜季「群青学舎」 薄明 後編
 知識を持っていてもその病ゆえに実際の世界を知らない万里雄。そんな彼にとって青子の存在はかけがえのない存在で。そして、万里雄を喪った青子が思い出す彼とのやりとり。激しい切なさを呼ぶ余韻に満ちております。入江亜紀は本当に上手いなあ。

森薫「エマ 番外編」
 今回は後日譚的位置づけで、自転車に乗るウィリアムとエマの話。
 すっこけたり、スカートを気にして転ぶエマさんが可愛らしい。また、ウィリアムを見つめる眼差しとか、ウィリアムが帰った後の反応とか表にはっきり出さないけれど、しかしウィリアムへの強い愛情が感じられていいですなあ。

タイム涼介「アベックパンチ」
 試合会場にたどり着いたイサキとヒラマサ。チャンピオンの姿を見たヒラマサはイサキの制止も聞かずリング上に乱入してしまうが、そこでチャンピオン達がとった行動は―――。
 感情のまま暴走するヒラマサに対して、それを心のどこかで羨ましく思うイサキ。紆余曲折の末に正式に競技「アベックパンチ」でチャンピオンに挑戦することになったイサキとヒラマサ。パートナー探しを一体どうするのか、果たして二人はちゃんとスポーツできるのか。益々面白くなってきました。
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