2006年12月30日

石塚真一『岳』(3)

 「ビッグコミックオリジナル」連載中、日本アルプスを舞台に、山岳救助ボランティアを主役に描く山岳漫画の第3巻。

 基本的に1話完結のオムニバスなので、この巻でストーリーがどうの、という書き方ができないのですが、相変わらず凄いなあ、と。

 山の遭難事故を題材としてとりあげ、遭難者達にご都合主義的な軌跡の生還などは無く、死ぬ者は死んでしまうというシビアさがあります。
 人の生と死というドラマを取り上げているにも関わらず、湿っぽくならず、どこか爽やかささえ感じられるのは、主人公の三歩の明るさと、山への大きな愛のためでありましょう。
 俗世を離れて生き、どこか白痴的言動の三歩。しかし死者に対してさえ山を愛する者として、敬意と友愛の情を以て接する態度が、彼の山と人間への大きな愛が、物語を清浄なものにしております。


岳 3 (3)岳 3 (3)
石塚 真一

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2006年12月28日

作:武論尊 画:池上遼一『覇 −LORD−』(7)

 新しい巻が出るたびに、我々の「三国志」観を揺るがす驚異の三国志漫画、第7巻。
 侏儒の陳宮、2世紀の時点で「絶対君主」を唱える董卓など、色々とサプライズはありますが、この7巻の主役は貂蝉でありましょう。

 大きなアレンジを加えつつ、董卓と呂布を手玉に取る貂蝉、という誰もが知る筋で話を運びながらも、実は貂蝉は漢王朝の末裔だったという度肝を抜く設定を平気で混ぜる辺りに、この『覇−LORD−』の狂いっぷりをみることができましょう。

「俺に色仕掛けは通用せんぞ……」
「……お試しになりますか……」
「ならば勃たせてみよ!」

 という呂布と貂蝉のやり取りとか池上節が炸裂しています。
 新刊が出るたびに「もうこれ以上驚かないぞ」と思うのですが、そのたびにこちらの予想の遙か上を行く展開で驚かされます。
 間違いなく、三国志漫画の歴史に名を残す作品と言えましょう。

覇-LORD 7 (7)覇-LORD 7 (7)
武論尊 池上 遼一

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2006年12月25日

石川雅之『もやしもん』(4)

 ゴスロリ少女の正体に吃驚した、と人に告げたら「それはあまりにも鈍すぎるだろう」と言われました。
 そ、そうかな……?
 
 というわけで、日吉酒店に現れた謎のゴスロリ美少女の正体が明らかになったり、樹教授の恐ろしさが垣間見えたり、直保君が菌を見ることが出来なくなったりする第4巻。
 自分の人生で色々な選択肢を経験したいから、といってゴスロリを着るのはまだ分からないでもないですが、直保と○○までしてしまうゴスロリ美少女さんはすげえ。

 そして「菌が見える」という特殊能力を喪失した直保に「存在価値がない」と痛罵する遙かに対し、直保のあるがままを肯定する川浜と美里のダメ先輩二人。この二人の株がストップ高。普段はアレだけれどこういうところで男を見せる二人は本当に格好良いなあ。
 
 農大というある種特殊な環境で、菌達が見える青年というちょっと特殊な人が主役ではありますが、そこに描かれている人間模様というのは、由緒正しい青春漫画の血脈であるなあ。
 すっとぼけた味わいと、農大っぽい長閑さに乗せて語られる青春劇、とでも言うべきなのでしょうか。
 
 それにしても、相変わらず菌達はのほほんとノーテンキで愛らしくていいなあ。
 私が買ったのは特装版ですが、おまけのフィギュアの出来もあの味を見事に再現していて素晴らしいなあ。

もやしもん 4―TALES OF AGRICULTURE (4)もやしもん 4―TALES OF AGRICULTURE (4)
石川 雅之

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2006年12月24日

木尾士目『げんしけん』(9)

 笹原達の世代の卒業までを描く最終巻。
 一つの世代が終わり、また新しい者達が部室の扉をくぐる――的な終わりではありますが、まあ、正直蛇足感も否めないなあ、と。

 おたくであるにも関わらずきちんと恋愛をこなし、ヌルいくせに編集者の職につくという無憂の団円を迎えさせて「おたくって楽しいもの」「おたくっていいじゃないか」というルサンチマンをそぎ落とし去勢されたおたく像を肯定してしまう底意地の悪さ。

 そんなファンタジーの中でも、言い訳の思索と迂回ばかりを繰り返し、行動に至らない斑目と、居ても居なくても場の大勢に全く影響は与えないくせに、ひたすら空気の読めないクッチーという二人の存在がこの漫画におけるおたくのリアリティを最後まで担っていたなあという印象です。

 しかし、なんだかんだ言っても、この作品を前にすると「おたくっていうのはさァ――」と自分のおたく論・おたく観を披瀝せずにはいられないあたり、向こうの手の上で踊らされているのだろうなあと思わされ、癪でもあり上手いのだなあと思ったり。

 特装版についている同人誌のなかでは篠房六郎が素晴らしく面白かったです。

げんしけん 9 (9)げんしけん 9 (9)
木尾 士目

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2006年12月23日

原作:吉野弘幸 漫画:佐藤健悦『聖痕のクェイサー』(1)

 ロシア正教系の学園で、聖像の謎を求めて金属元素の力を持った異能者達が繰り広げる美少女バトルロマン!

 ――といえば比較的普通な印象ですが、

  「授乳でパワーアップ」
 
 という空前絶後の設定がくっついて、一気に作品の変態度というかエロ度というか狂気度とかそんなモノを上げちゃっている作品。

 コミック板『舞−乙HiME』で鳴らしたお色気シーンとアクションに磨きがかかっております。舞HiMEの頃に比べて大分達者な絵になってきたなあ、という印象です。
 しかし、何にしても「授乳」のインパクトが強すぎて全てそっちに持って行かれてしまっている感はありますが。素晴らしい発想力だなあ、と思うのです。

聖痕のクェイサー 1 (1)聖痕のクェイサー 1 (1)
吉野 弘幸 佐藤 健悦

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柴田ヨクサル『ハチワンダイバー』(1)

 プロ棋士へ夢破れ、「真剣師」として賭け将棋で日銭を稼ぐ菅田。街の将棋指し達の間では無敗の彼だったが「アキバの受け師」という女勝負師に破れてプライドを打ち砕かれた彼は、己の将棋を捨て、真の意味で「真剣師」としての将棋を指し始める――

 やー、素晴らしく面白いなあ。
 プロ棋士まであと一歩だったというプライドから正統の将棋刺しを自負していた男が、勝利と金のために自らの将棋を壊し、新たなスタートを切る様が実にいい。とても格好が悪くていい。
 生かさず殺さずのカモにわざと負けて、自分の将棋に対する裏切りにのたうちまわり、涙を流しながら指す様は大変に無様で、それを乗り越え、ひりつく緊張感の中で指す将棋が熱すぎます。

 一方で、なぜか副業でメイド清掃業をしているアキバの受け師と、彼女を部屋に呼んで、掃除をしてもらう菅田のやりとりの間の良い感じの抜け具合。アキバの受け師に勝つんだ! と意気込む菅田君ですが、微妙にメイド姿のアキバの受け師への恋情が含まれている辺り、大変に俗っぽくって楽しい。
そして、丁寧な物腰でメイドキャラとして建てつつもエゲつないアキバの受け師は実に良いキャラクターであるなあ。

 自らの将棋と決別し、勝負師としての将棋を始めた菅田。自らを9×9マスの盤面に潜る「ハチワンダイバー」と名乗った彼の今後や如何に!

ハチワンダイバー 1 (1)ハチワンダイバー 1 (1)
柴田 ヨクサル

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2006年12月21日

「コミックリュウ」2007年2月号

4号目となりましたが、果たして世間的に認知度が高いのかどうか良く分かりません。

表紙:東冬
巻頭カラー:神崎将臣「XENON」

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2006年12月20日

「チャンピオンRED」2007年2月号

・表紙「鉄のラインバレル」
・巻頭カラー 「聖闘士星矢 エピソードG」
・新人賞準入選作掲載
 廣瀬周「おしおき シャーマン娘!」
・読み切り掲載
 木々津克久「フランケン・ふらん」
 松本英「魅羅狂☆我有頭」
 加藤和生「凶悪ランドセル少女パッセロ!」
・付録 「聖痕のクェイサー」&「鉄のラインバレル両面下敷き」

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2006年12月17日

あずまきよひこ『よつばと!』(6)

 牛乳飲んだり、エクレアを食べたり、自転車を買ってもらったり、その自転車に乗ってちょっとした冒険に出たりと、夏休みが終わってもよつばの毎日は新しい発見に満ちているのでありました。

 相変わらず子供の視線から描く世界が巧いですなあ。
 あらゆるものが新鮮な驚きに満ちてきらきらしているような世界。
 瑞々しい子供の感性みたいなものを、こういう誰にでも共感できる形で描けてしまうあずまきよひこは凄いのだなあ。
 これは感性によるものなのか、それとも観察眼によるものなのか。まあ、両方だと思うんですが。
 
 好奇心とかちょっとした欲に負けちゃって約束を破っちゃったり、小さな「悪事」を犯してしまって戦々恐々としたりするよつばの生き生きとした描写が素晴らしい。
 そして、手にいれたばかりの自転車に乗っての小冒険。
 家の周囲だけだったよつばの世界が、そこを離れて新しい領域に広がっていく時の純粋な驚きと感動が描かれていております。
 
 また、その子供と戯れる大人達の距離感もいいなあ。きちんと笑えるオチも付けてしまう辺りも含めて。

よつばと! 6 (6)よつばと! 6 (6)
あずま きよひこ

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2006年12月16日

岩永亮太郎『パンプキン・シザース』(6)

 生意気なおっぱいと豊満なおっぱいが表紙の第6巻。
 アニメ化後、初の単行本ということでよりキャッチーに、掴みはOK、というところでしょうか。

 そんなエリスとソリスの結婚生活を描くエピソードを挟みつつ、情報1課「クレイモア・ワン」の副長の話と、戦争が終わってなお「演習」を続ける部隊の話、手紙泥棒を追う陸情3課のエピソードを収録。

 方法が違ってもラブラブなエリス夫婦と、ソリス夫婦。キャラの立たせ方も良い感じに。
「お子胤をくださいませ」
 とかどこのエロ漫画かと思いましたわ!

 そして、何だか重要そうな伏線が提示されましたが「冬虫夏草」って比喩は無いんじゃないかなあ。もっと、こう、なんというか……という気はします。

Pumpkin Scissors 6 (6)Pumpkin Scissors 6 (6)
岩永 亮太郎

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2006年12月14日

小島アジコ『となりの801ちゃん』

 京都にある御園橋801商店街のマスコットキャラクター、801(やおい)ちゃん。それを自分の彼女の腐女子に見立てた漫画を綴るブログ(→リンク)の書籍化。

 暴走する腐女子思考と、クリーチャー801ちゃんとと擬態女性の間を行き来する様が愉快。全ての物事の関係性に攻めと受けの妄念が支配し、ホモセクシュアルに結びついていく腐女子思考というのは因業なものであるなあ、と。
 きゃっきゃと騒ぐ801ちゃんが楽しくもまたどこかトホホ感があり。

 でも、まあ、これ、楽しいけど大変な惚気話でありますよね。
 ……チッ!
 
 いや、まあ、面白いんですけど。
 
 …………チッ!

となりの801ちゃんとなりの801ちゃん
小島 アジコ

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2006年12月13日

「コミックビーム」2007年1月号

表紙&巻頭カラー&最終回:桜玉吉「御緩漫玉日記」

ああ、「漫玉」も最終回か……。

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2006年12月10日

「コミックREX」2007年1月号

 巻頭カラー まりお金田「住所未定(仮)」
 新連載 小竹田貴弘「怪異いかさま博覧亭」
 読み切り 依澄れい「東京うさぎ」
 付録「ろりぽ∞」「住所未定(仮)」掛け替えブックカバー

 というわけで、REXも創刊1周年。無事生き延びましたか。

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原作:大西祥平 漫画:中里宣『涅槃姫みどろ』(4)

 「週刊少年チャンピオン」連載中。欲望にまみれた人間達に謎の美少女みどろさんが下す涅槃流裁き! 五濁悪世に咲く一輪の妖花 みどろさんの活躍を見よ!

 といわけで、この4巻でも相変わらず酷い(褒め言葉)裁きを下すみどろさん。迷い人に運命分岐を示す少年人形・メルトという新キャラも登場し、ますます冴え渡るみどろ節。
 欲望丸出しの人間、ちょっとした欲に駆られて道を誤る人間、そういった因業な人々の醜さと滑稽さを描く中で、時折挟まれる「真剣師」「名画座の怪人」のような良い話が良いアクセントになっております。いや本当に執事さんは人情キャラやで!
 一見無邪気な子供、でも実は腹黒という新キャラメルトも相当にアクの強いキャラで、これからどんどんエピソードの「濃さ」が増していきそうで楽しみです。

涅槃姫みどろ 4 (4)涅槃姫みどろ 4 (4)
大西 祥平 中里 宣

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2006年12月09日

施川ユウキ『サナギさん』(3)

 「週間少年チャンピオン」連載中、言葉と思考がスピンアウトする少女達のほのぼの系ギャグマンガの第三巻。

 天然なサナギさんと、毒舌系不思議ちゃんのマフユさんらのレギュラーキャラに加えて、前衛詩作少女イマミヤさん、懐疑的思考キャラのハルナさん、図書き少女山田さん、色々と芽生えるイソヤマなど個性的な新キャラも続々出てきて華やかな感じであります。

 身の回りにある当たり前の事や言葉をひたすら考え込んでツッコミを入れるというというスタイルは「あー、そういえばそうかもしれないよね――えぇっ?!」みたいな共感とそれを乗り越える意外性があって大変に愉快。ほんわかな絵柄でブラックなネタも多いのもまたステキです。

サナギさん 3 (3)サナギさん 3 (3)
施川 ユウキ

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kashimir『百合星人ナオコサン』(1)

 メディアワークス「電撃大王」連載中。先日出た芳文社『○本の住人』に続く、kashimirの2冊目の単行本。

 地球総百合化を目論む「百合星人」のナオコサン。彼女の頓狂極まる言動が居候先の娘、みすずを大いに翻弄する! いや、弟さんもママさんも、お友達の柊ちゃんも、みんな変だった!

 ――という。
 いやあ、これはとても良いカオスですよ。
 「メ・ガ・ネ」
 「宇・宙」
 だけで分かり合える宇宙人と地球人。

 「百合星人」とはいいますが、女の子同士が云々、という要素はすぽーんとうっちゃって、ひたすらにはた迷惑で人の話を聞いていないナオコサンの言動が常識人のみすずの日常にカオスを呼び込むという。
 思考が大脳まで至らないで言動に表れてしまうような、全てに於いて突拍子もないナオコサン。その脳の配線の飛びっぷりが実に素晴らしい。
 それらがどれもこれも、「幼女」だとか「触手」だとか、おたく的ダメ系エロエッセンス方面に噴出しているのがまたたまらないカオス感を生み出しております。

 可愛らしい絵柄に似ないこのカオス感。そしておたく心を刺激するマニアックな小ネタ。
 本当にkashimirの一筋縄ではいかないセンスは素晴らしいと思います。

それにしても、
「おねえちゃんのスカートはいて遊んでたら急にちんちんが!!! ちんちんが!!!」
 とかナチュラルに言い出す弟さんが実は一番の変態に違いない。

百合星人ナオコサン 1 First Contact (1)百合星人ナオコサン 1 First Contact (1)

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2006年12月05日

森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』

  『太陽の塔』で第15回ファンタジーノベル大賞を受賞した森見登美彦の、『四畳半神話大系』『きつねのはなし』に続く4冊目の単行本。

 春の歓楽街を練り歩き、ま夏の古本市で我慢大会を戦い抜き、秋の学祭で神出鬼没のゲリラ演劇を追いかけ、風邪の大流行する冬の京都で病床に喘ぎながら、麗しの黒髪乙女のために純情男子は奮闘するのでありました。些か空転気味に。

 天然気味の黒髪の乙女と、純情なインテリ学生を交互に語り手とし、「天狗」を自称する青年、謎の風狂老人李白翁、パンツ総番長に詭弁踊りを踊る詭弁論部の面々、性的な物の収集に情熱を傾ける閨房研究会の皆さん、学園祭に出没する「韋駄天こたつ」にゲリラ演劇「偏屈王」等々――愉快痛快奇々怪々な人物達を巻き込んで京都の街を舞台に繰り広げる青春・恋愛物語。

 天真爛漫でな赤子の如く素直な「黒髪の乙女」と、些か大上段に構えた感のある自己韜晦に長けたインテリ青年「先輩」の物言いの対比が生み出す何とも言えないリズムが実に素晴らしい。森見登美彦の独特の語りのリズムは読むうちにニヤニヤしてくるくらいに心地よいなあ。

 どこか滑稽味を帯びたその語りに乗せて語られるのは、大迂回をする恋愛。あからさまなまでに「偶然」の出会いを頻発させ、同じ本に同時に手を伸ばす、というロマンスの演出のために行動する「先輩」。
 そしてそんな外堀を埋める作業に没頭して本丸に突撃しない「先輩」の恋愛が可笑しくもあり真摯でもあり。

 そして、現実の中に突如立ち現れる幻想。太陽の塔の叡山電車でもそうでしたが、森見登美彦はこのファンタジーを実に効果的に持ってきますね。

 というわけで、魅力的なキャラクターと文章を心ゆくまで堪能させてもらいました。実に良かった!

夜は短し歩けよ乙女夜は短し歩けよ乙女
森見 登美彦

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2006年12月02日

福本伸行『最強伝説黒沢』(10)(11)

 公園住まいのホームレス達とともに、不良少年どもと戦う事になった黒沢さん。しかし何をやっても士気の上がらぬホームレス達。そんな彼らを率いて、ついに戦いの幕が上がる――


 泣いた! 黒沢さんの「男の戦い」に泣いた!
 今まで失敗と挫折と屈辱にまみれてきた黒沢さんが、人としての矜恃を守るために挑んだ戦い。
 大勢に殴られ、蹴られ、袋だたきにされてもなお、人間としての尊厳を胸に立ち上がる黒沢さん。その姿は圧倒的な理不尽と力で人間を押し潰していく「世間」と戦う人間の姿そのものであります。

 最初はしょっぱい男の生き様に憐憫と共感を覚える作品として始まり、勘違いから祭り上げられた英雄の滑稽さを描く中盤でしたが、正直、このようなラストになるとは思っておりませんでした。あんたの最期は本当に立派でしたよ、黒沢さん!

 恐らく、打ち切り的なラストなのでしょうが、一人の冴えない男が人間の尊厳のために戦うも、しかし死んでしまうというラストは切ない。あまりにも切ない。小さくても良いから黒沢さんには幸せが与えられて欲しかった……。
 しかし、そうであるが故に、このラストは一層読者の胸を打つのでありましょう。

 全ての男達は黒沢さんに黙祷を捧ぐべし。

最強伝説黒沢 11 (11)最強伝説黒沢 11 (11)
福本 伸行

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「ヤングキングアワーズ」2007年1月号

 表紙と中巻カラーに大石まさる「水惑星年代記」
 巻頭カラーは真田ぽーりん「ドボガン天国」
 読み切りとして堤義貞「短い坂を登る途中に」、竿尾卓「コンビニDMZ」

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2006年12月01日

諸星大二郎『グリムのような物語 スノウホワイト』

 誰もが良く知る「グリム童話」を元にした短編漫画集。
 前作「トゥルーデおばさん」に続く第二弾ですが、版元が朝日ソノラマから東京創元社に。

「七匹の子やぎ」「奇妙なおよばれ」「漁師とおかみさんの話」
「スノウホワイト」「小ねずみと小鳥と焼きソーセージ」
「ラプンツェル」「コルベス様」「めんどりはなぜ死んだか」
「カラバ侯爵」「藁と墨とそら豆」「とりかえっ子の話」「金の鍵」

 以上12編を収録。
 どれもこれも、諸星大二郎のアレンジによって、なんとも奇妙な味わいのある作品に仕上がっております。
 元作品からしてカオス感漂う「奇妙なおよばれ」などは、その無気味さと訳の解らなさとでクラクラします。本当に素晴らしいなあ。この本の中で一番でしょう。

 また、「これで、みんな死んでしまいました」で終わる「めんどりはなぜ死んだか」や、大殺戮の「コルベス様」など、大変に酷い話で素晴らしい。

 白雪姫を優等生的なゴシックホラーに仕立て上げた表題作や、SF要素が強く表れた短編など、どれもこれも大変に見所のある作品が詰まっております。
 が、やっぱり諸星大二郎の短編は、ラストに「おい!」とツッコミを入れたくなるような酷い話に何とも言えないユーモアがあるなあ、と思うのです。
 最後の一編「金の鍵」も何ともまあ良い具合にしょっぱい終わり方で素敵です。


スノウホワイト グリムのような物語スノウホワイト グリムのような物語
諸星 大二郎

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